なぜモーグルの男女金メダル候補は予選で明暗を分けたのか…川村あんりが5位通過、堀島行真はまさかの16位で2回目へ
案の定と言うべきか。最初のミスが響いたエア点は10.49と、予選1回目を通過した10人のなかでは最も低かった。1位のジャカラ・アンソニー(23・オーストラリア)が17.26、2位の前回平昌大会金メダリストのペリーヌ・ラフォン(23・フランス)の16.05と比べても、上位陣に大差をつけられていることがわかる。 それでも全体の5位につけて予選を一発通過した。要因は、とっさの機転を利かせて滑走を立て直し、ミスを相殺した川村の修正能力だ。 実際に28秒33で16.07を得たスピード点は上位10人中で4位に入り、ターン点に至ってはトップのアンソニーの50.0に次ぐ49.8を叩き出している。 予選の得点は6日の決勝に持ちこされない。初めて臨む五輪で覚えた緊張が第1エアでのミスの要因だったと考えれば、雰囲気にも慣れる決勝へ逆に期待が膨らんでくる。 「やはり特別な雰囲気がありますし、ずっと夢に見てきた舞台なのですごく楽しかった」 川村自身も予選を振り返りながら、決勝へ向けてこんな手応えを明かした。 「まだまだ直すところもあるし、もっと点数を上げていけるかなと思っています」 一方、川村が練習でアドバイスを求めるビブナンバー「2」で2度目の五輪に臨んだ男子の堀島は対照的に、フィニッシュを直前に控えた第2エアでまさかのミスを犯してしまった。第1エアで滞空時間の長いフルツイストを完璧に舞い、中間セクションでも正確かつ美しいターンを披露。しかし、第2エアで繰り出したコーク720の着地点が、予想を大きく超えてしまった。飛びすぎたのだ。競技後に堀島はこう振り返っている。 「練習のときはそんなに飛んでいなかったのに、本番ですごい勢いで飛んでいってしまった。予選2回目では飛びすぎない、という調整をしっかりとしていきたい」 飛びすぎた代償は小さくなかった。着地点がコブの手前だったためスキー板のトップが上がってしまい、あわや尻もちをつく寸前まで体勢を崩してしまう。減点もエア点とスピード点にとどまらず、コブを飛ばしてしまったためにターン点にも及んだ。 参加30人中で唯一の80点台となる81.15点を叩き出し、予選を1位で通過したもう一人の金メダル候補、前回平昌大会覇者のミカエル・キングズベリー(29・カナダ)のスピード点、ターン点、エア点はそれぞれ15.41、50.3、15.44だった。 翻って74.40点で16位だった堀島は順に14.53、46.2、13.67だった。今回のコースは減速が必要となる第2エアの手前があえて急傾斜にされた関係で、スピードコントロールが難しいとされている。コースに潜む罠にはまった堀島は、たったひとつのミスが大きな減点につながるモーグルの授業料を払った形になった。 もっとも、決勝の第2ラウンドで転倒し、最後の第3ラウンドに進めずに11位で終えた前回の平昌大会と比べれば、まだ挽回できるチャンスが残されている。 「2度目のオリンピックに出場できて、この日のスタートラインに立てたことにすごく幸せな気持ちを感じていました」 スタート直前に大きく深呼吸したときの心境をこう明かした堀島に、同じく優勝候補として臨みながら、プレッシャーに蝕まれていた4年前の面影はない。