いま東京カフェのトレンドは「没入」――アートと建築にどっぷり浸れる2軒
ギャラリーと聞くと身構えてしまうが、「ここはマンツーマンで案内されることもないので、作品と向き合って自分ひとりの時間が過ごせるんです」(艸谷さん)。もともとアートに縁もゆかりもなかった艸谷さんだが、今はアートめぐり以上の楽しみが見つからず、この魅力をたくさんの人と共有するために、アートメディアとコミュニティを立ち上げたのだとか。 アートは、その裏側にあるアーティストの価値観や新しい視点を知ることで、より深く楽しめるというのが艸谷さんの持論だが、その意味でも、作家本人が来場することも多い「WHAT CAFE」はお勧め。作り手とアートに出合うといいう「新たなカフェの楽しみ方」を味わえる場所だ。 ■梵寿綱の名建築 × Cafe MISSPONNE 不動産広報としても、インテリアコーディネーターとしても働くひかるさん。10代のころから建築にひかれていたという彼女が注目するのが、“日本のガウディ”と呼ばれる異色の建築家・梵寿綱(ぼんじゅこう)だ。梵寿綱建築のひとつ「マインド和亜」の1階、長らく空いていた場所にカフェがオープンしたと聞きつけ、すぐさま訪れたという。 代田橋駅から徒歩10分。の閑静な住宅街のなかに突如として現れる「Cafe MISSPONNE(カフェ ミスポンヌ)」の外観は異空間そのもの。ひかるさんも「梵寿綱建築のなかでも、こちらは特に立体的な装飾や鮮やかなタイルなど、壁面のダイナミックさが特徴的」とお気に入りだ。 漆喰(しっくい)にタイルに木工と、各職人が手がけたアートに目移りしてしそうだが、ひかるさんのイチオシはエントランス部分。「このファサードの世界観と、後付けの店舗看板との調和が素晴らしいんですよね」。取材の日は、店舗看板の配色に合わせて服装をコーディネート。訪れる建築に合わせて洋服を選ぶのも、ひかるさん流の楽しみ方だ。 近隣には梵寿綱建築がもう一棟あるため、代田橋は建築めぐりのコースとしても優秀なのだとか。大人のサロンとしても活躍するカフェには、心ときめく建築と優雅なティータイムが待っている。 (構成 生活・文化編集部 写真 橋本千尋 古根可南子)