静かな退職への企業の対抗策「ステルス解雇」、その大きすぎるリスク
企業と被雇用者の間には分断があり、断続的な綱引きが行われている。従業員が慢性的に仕事へのやる気を見せず、要求される最低限のことしかしない「静かな退職」と呼ばれる現象も話題になった。 2023年の各社は、こうした状況に対処しようとして、常時チェックの他、長々と時間のかかるミーティングやマイクロマネジメントを行なった。だが、どのアプローチもうまくいかなかった。それどころか、期待される仕事の水準について、企業と被雇用者の間に断絶があることが明確になった。 企業側はこうした状況に、「静かな解雇」で対応することにした。そしてこの動きは、「ステルス解雇」という、ソーシャルメディアで注目される最近のトレンドにつながった。 ■「ステルス解雇」が企業文化に悪影響を及ぼす理由 経営者向けにコンサルサービスなどを提供するVistage(ビステージ)でチーフ・リサーチ・オフィサーを務めるジョー・ガルヴィンは、「ステルス解雇」が企業文化にとって有害な慣行である理由を、こう説明する。「ステルス解雇」は、ソーシャルメディアで最近流行している言葉だが、こうした手法自体は目新しいものではない。「トレンドになっているこの用語は、企業が、それとはっきりわかるレイオフを始めるのではなく、目立たないように人員削減することを指す。例えば、軽微な違反に的を絞り、従業員に静かに退職を迫ったり、退職を促すような職務に配置転換したりすることだ」 「ステルス解雇」の前にも、企業側と従業員の綱引きを象徴するような職場のトレンドは見られた。MasterClass at Work(マスタークラス・アット・ワーク)で学習デザイン・戦略部門を率いるジョン・スコットは、「我々はこれまで、『怒りの退職』を見てきた。これは従業員が、何の前触れもなく、劇的な演出で仕事を辞めることだ。しばしばその機会を利用して、一般的な不満や、特定の上司への不満を表明するほか、ソーシャルメディアで名声を得る機会にしようとする場合もある」と述べる。「我々は、『怒りの応募』も目にしてきた。積年の不満や、決定的な出来事をきっかけに、従業員が新たなチャンスを得ようとして、数多くの求人に次々と応募する現象だ」 「ステルス解雇」は新しい現象ではないかもしれないが、何年も前から職場に存在していた有害なトレンドに対する新しい呼称と言える。怒りが沸騰し続けるなか、ビジネスリーダーたちは、2025年には「リベンジ退職」がさらに急増すると予測している。これは、過小評価や燃え尽き、職場文化への不満など、ネガティブな経験に直面した従業員が、突然退職することを指す。