静かな退職への企業の対抗策「ステルス解雇」、その大きすぎるリスク
「ステルス解雇」が増加させた企業側の2つの要因
ビステージのガルヴィンは、従業員を解雇する言い訳を探す「ステルス解雇」というやり方は、世間のうるさい目を避ける簡単な方法のように見えるかもしれないと述べる。しかし、大量解雇にはイメージの悪化が伴い、企業文化や組織全体の健全性を損なう重大なリスクが存在する、と同氏は主張する。 ガルヴィンは、「ステルス解雇」の増加には2つの要因があるとしている。第一に企業は、不確実な経済状況のなかでコストを迅速に削減したいが、投資家や顧客、未来の従業員から否定的な注目を集めることは避けたい、と感じている可能性がある。企業がコストを抑制し、利益に貢献しない取り組みを制限しようとするなかで、従業員は、軽微に見える違反で「静かに解雇」されることを警戒している。 第二に、レイオフには汚名が伴うため、企業はより目立たない方法で労働力を削減しようとする。しかしガルヴィンは、こうしたやり方には短期的な利益があるかもしれないが、長期的コストはかえって高くなる場合があると指摘する。その予期せぬ影響とは、士気の低下、生産性の低下、そして従業員が不安な気持ちを抱えて1年を過ごすことだ。 ガルヴィンは、有害性の強い職場文化を生み出すこうした有害な行動から、5つの結果が起こり得ると指摘する。 1. 同僚が不当に標的にされたり、静かに解雇されたりしていると感じた従業員は、次は自分の番だ、と恐れ始めるかもしれない 2. この疑心暗鬼は、リーダーへの不信感を広め、チームの結束力を低下させることにつながる 3. 恐怖と不確実性に支配された職場文化は、組織の成功に不可欠なイノベーションやコラボレーション、エンゲージメントを妨げる 4. このような行動は、時間の経過とともに雇用者と従業員の絆を破壊し、士気や生産性、ひいては企業の収益に悪影響を及ぼす 5. 常時接続で高度につながった今日の世界では、LinkedIn(リンクトイン)やGlassdoor(グラスドア)のようなプラットフォームが、将来の従業員だけでなく、顧客にまで影響力を持つ可能性がある。リーダーは、不公正な解雇、あるいは不正の疑いのある解雇と受け取られる可能性があることで、評判を落とさないよう留意しなければならない ■「ステルス解雇」に企業はどう対処できるか ガルヴィンは、潜在的に害をもたらし得るこうしたトレンドを企業側が緩和し、綱引きを好転させることができる方法はあると考えている。それは、従業員の懸念に積極的に耳を傾け、協力しあえる目標設定を奨励し、従業員の貢献をしっかり認めることによって信頼関係を築くことから始まる、と同氏は確信している。 「既存の人材を維持し育成することは、頻繁に従業員を入れ替えるよりもコスト効果が高いだけでなく、回復力に富みパフォーマンス性の高い組織を構築するためにも不可欠だ」とガルヴィンは述べる。 「ステルス解雇」というトレンドに対処するため、ガルヴィンは、企業側が透明性を優先させ、オープンなコミュニケーション文化を醸成することを提案している。 「リーダーは、従業員の能力開発、メンタルヘルス・リソースそして離職率よりも定着率を優先させる支援的なマネジメント手法に積極的に投資すべきだ」とガルヴィンは結論づけている。
Bryan Robinson, Ph.D.