アーティスト・田名網敬一さん「くも膜下出血」で逝去 前兆となる5つの症状を医師が解説
ポップな画風で知られるアーティストの田名網敬一さん(88)が、「くも膜下出血」のため8月9日に逝去していたことを所属ギャラリーが発表しました。 くも膜下出血は、脳の表面の血管が破れて出血してしまい、くも膜下腔というスペースに出血が拡がった病気です。この記事では、くも膜下出血の前兆となる症状・予防法や何科へ受診すべきかなどを医師の中川先生が解説します。気になる症状がある場合は迷わず病院を受診してください。 【イラスト解説】知っておくべき「くも膜下出血」のセルフチェック法 ※この記事はMedical DOCにて【「くも膜下出血の前兆」となる5つの症状はご存知ですか?医師が徹底解説!】と題して公開した記事を再編集して配信しており、内容はその取材時のものです。 [この記事は、Medical DOC医療アドバイザーにより医療情報の信憑性について確認後に公開しております]
「くも膜下出血」とは?
くも膜下出血とは、脳の表面の血管が破れて出血してしまい、くも膜下腔というスペースに出血が拡がった病気です。発症の原因のほとんどは脳の動脈にできた瘤(こぶ):脳動脈瘤の破裂です。 脳動脈瘤が存在するだけでは何も症状はありません。しかし一度破裂すると、出血によって髄膜が刺激され、経験したことのない頭痛や嘔吐、脳が圧迫されることによる意識障害、麻痺などの神経障害を引き起こします。 くも膜下出血は、発症した人の1/3は死亡し、1/3は何らかの後遺症が残り、残る1/3だけが社会復帰できるという、非常に重篤な病気です。 受診すべき診療科は脳神経外科です。原因となっている血管の位置によって、開頭手術やカテーテル手術などが適応になります。
くも膜下出血の前兆となる症状
「頭痛」 くも膜下出血の最も代表的な症状として、頭痛があります。くも膜下出血が生じた場合、経験したことのないような「突然、バットで殴られたと感じるような強い頭痛」が特徴的です。 しかし、このくも膜下出血に先立って起こる、「警告頭痛」というものがあります。警告頭痛(warning headache)は突然に発症し、持続時間は1~2日とされていますが、人によっては数分~2週間と個人差も大きいです。 頭痛といっても、頭全体だけではなく、首の痛みを自覚する場合もあり、痛む場所にも個人差があります。この警告頭痛は、くも膜下出血の原因になる脳動脈瘤からの少量の出血が原因とされています。 これから説明するくも膜下出血の前兆となる症状に対して、対応は全て同じですのでここで説明いたします。 このような症状が生じた際は、本人は横になるなどできるだけ安静にした上で、周囲の方が救急要請であったり病院へ連れて行くようにしてください。超緊急というわけではありませんが、できるだけ早く受診する必要があります。専門科は脳神経外科です。 「吐き気・嘔吐」 くも膜下出血の前兆となる症状としては、吐き気・嘔吐もあります。これも先の頭痛で説明した、脳動脈瘤からの少量の出血が原因となることが多いです。 先の頭痛と合わせて出現することも多いです。少量の出血が髄膜を刺激することで、吐き気・嘔吐を引き起こします。ご自身で我慢するのは非常に危険ですので、すぐに医療機関を受診しましょう。 「意識状態の悪化」 くも膜下出血の前兆となる症状として、意識状態の悪化もあります。具体的にいうと、こちらの問いかけに答えられない・的外れな返答をする、自分の名前が言えない、日付がわからない、目を開けないといったものがあります。 これも脳動脈瘤からの出血が原因です。対応は前述と同じですので省略いたします。 「視力障害」 くも膜下出血の前兆として、視力障害もあります。具体的に言うと、片側の目が失明する、全体的に見えづらくなる、まぶしくてよく見えない、ものが二重に見えるといった症状があります。これは脳動脈瘤ができた部位によって分かれます。 特に動眼神経という眼球を動かす神経の近くに脳動脈瘤ができた場合は、ものが二重に見えるという症状が出やすいです。動脈瘤自体が動眼神経を圧迫していたり、出血による影響が出る場合もあります。 どのパターンの視力障害にせよ、突然発症して頭痛も伴うといった状況であれば緊急性は高いです。早急に救急要請して脳神経外科医のいる病院へいきましょう。 「血圧の変動」 くも膜下出血の前兆として、血圧の変動があります。普段の血圧の値よりも非常に高くなったり、逆に低くなったりという状態です。 くも膜下出血では、血圧が非常に高くなると脳動脈瘤からの再出血が起こる可能性が上がり、非常に危険です。そのため血圧は低い方が良いということになります。 緊急性と救急要請などの対応はこれまでと同様ですが、普段から血圧を下げる薬を飲んでいる方は可能であれば追加内服をしておきましょう。 しかし、基本的には医療機関で治療するのがベストですので、これはなかなか搬送先が見つからない、医療機関まで時間がかかる、といった時の応急処置と考えてください。