「社会をよくする投資」を知らなすぎた日本の代償 僕らが「マネーゲームのプロ」辞めて本を書く訳
鎌田:ええ。投資はよくも悪くも社会を動かす力があるので、リターンは金銭的な価値と同時に、社会的な価値にも目が向けられないといけないと思うんです。 田内:金銭価値がつくということは、所有権が移動するということなんですよ。逆に言うと金銭価値がついていないものは、所有権が移るとまずいもの。人権や参政権、空気だってそうじゃないですか。 だから金銭価値のあるものは、しょせん所有権が移動してもいいものであることを、みんなが理解しなきゃいけないんです。
値段のつかないものの価値を可視化するのは難しいですが、それに取り組んでいる1人が鎌田さんですね。 ■「社会をよくする投資」が「儲かる投資」になる条件 ──実際のところ、「社会をよくする投資」は儲かりにくいものなんでしょうか。 田内:それは、消費者の価値観次第です。 企業が社会にとっていい商品をつくっても、消費者がそれを選ばずに安いものばかり買う状況では、会社は儲かりません。価値に対して妥当な価格を払う消費者が増えれば、ちゃんと儲かるようになる。だからこそ、消費者教育が大事なんです。
──「企業を応援するなら、別に投資ではなくてもいい」とnoteに書いていましたね。 田内:「貯蓄から投資にシフトしましょう」「投資で企業を応援しましょう」と言いますが、企業にとっての一番の応援は消費者になることだと思うんです。にもかかわらず投資だけが取りざたされていることにも、違和感があるんですよね。 田内:それに「投資、投資」といわれますが、今の日本には資金需要がないんです。銀行の預貸率も、昔に比べるとすごく下がっているし。
「預金を眠らせておくのはもったいないから、投資商品を買いましょう」と勧めてくる銀行自身が、融資先や投資先に困っているんですよ。なのに投資を勧めるのは、少し無責任じゃないかなと。 日本が、諸外国に比べて預金割合が高いのは、これまで銀行中心の金融でうまく回っていたからですよね。ちゃんと資金がものづくりに流れていた。でも最近は、景気の低迷や、人口減によって日本市場の将来性がないことなどから、企業は資金を必要とするどころか、内部留保を溜め込んでいる。