「社会をよくする投資」を知らなすぎた日本の代償 僕らが「マネーゲームのプロ」辞めて本を書く訳
金融の仕事そのものが、高い給料をもらうべき価値があるかどうかは別問題なんです。本当は、給料以外でうまい仕組みがあるといいんですけど。 ■投資が「社会に果たすべき役割」とは何か ──では鎌田さんにずばりお聞きしますが、社会にとって投資の目的は何でしょうか? 鎌田:よい会社を増やすことだと思います。お金の流れが経済を形づくり、それが社会をつくるので、やはり経済をつくる主役は会社なんです。 企業がどんな振る舞いをするかで、世の中のあり方は変わります。「自分の会社さえ儲かればいい」というのではなく、社会全体がよくなるように活動する会社を少しでも増やすことが、投資の目的ではないでしょうか。
田内:コロナのとき、よく「経済を回すために」って言われたじゃないですか。「経済を回すためにお店を開けなきゃいけない」「旅行に行かなきゃいけない」とか、経済を回すことが目的化してましたよね。 お金を循環させるのは大事ですが、それなら給付金を出せばいいし、無理に経済活動をさせる必要はなくて。本来は「お金が回ったら、企業がどういう社会をつくるのか」「それによって、社会がどう幸せになるか」を先に考えるべきなんです。
でも今、人々の興味がどんどん「株価がどこまで上がるのか」という議論ばかりになっている。 鎌田:本当にそう思います。 ──鎌田さんも、新NISA熱でみんながリスクやリターン、手数料のことばかり議論していることに対するモヤモヤが、今回の本を書くきっかけになったんですよね。 鎌田:思い返すと、鎌倉投信を立ち上げたときも「これでいいのかな」という思いが原点でした。 お金を増やしたいというのは健全なモチベーションなので、それ自体を否定するつもりはありません。でも、お金を増やすこと「だけ」を目的にするのは違和感があって。
もう70年も、リターンを縦軸に、リスクを横軸に取ってどのファンドの投資効率がいいのかが測られる世界が続いているんです。 たしかにその理屈は完成されているかもしれないけど、すべてが数字のみで測られる世界でいいんだろうか、社会という軸はないんだろうか、という違和感から、13年ぶりに書こうと思った本が『社会をよくする投資入門』です。 田内:著書の中でも「金銭価値だけで論理が構成されている」とありましたね。