激戦の東京五輪男子100m切符争いに異変?…9秒台出ずとも桐生祥秀が大会1年前に新国立で優勝した意味とは
現時点で東京五輪の参加標準記録(10秒05)をクリアしているのはサニブラウン、小池、桐生の3人。各国の代表枠は「3」なので、山縣、多田、ケンブリッジらが男子100mで出場権を得るには、まず10秒05を突破しなければいけない。 なお世界陸連は地域間の公平性を保つために、来夏に延期した東京五輪の出場権をかけた選考期間を11月30日まで凍結している(東京五輪の参加標準記録にはカウントせず、世界ランキングにも影響しない)。 東京五輪を巡る戦いとしては、今大会は直接つながるものではない。しかし、新国立競技場で開催された東京五輪の”1年前決戦”は今後大きな意味を持つかもしれない。 新国立競技場は世界記録の約7割を誕生させたイタリア・モンド社製の高反発である「高速トラック」を採用しているが、スプリント種目で驚くような好タイムは出なかった。新型コロナウイルスの影響で十分なトレーニングが積めず、シーズン初戦という選手も多かったことが影響したと考えられる。 それでも高速トラックを駆け抜けた選手たちには”新たな感覚”が養われたことだろう。8月29日に開催されるアスリート・ナイト・ゲームズ・イン福井の男子100mには小池、桐生、多田、ケンブリッジらがエントリー。今度の舞台は桐生が3年前に日本人初の9秒台を叩き出した9.98スタジアム(福井県営陸上競技場)だ。東京での戦いを経て、スプリンターたちの感覚はさらに研ぎ澄まされている。福井の夜にデッカイ花火が打ち上がるかもしれない。 (文責・酒井政人/スポーツライター)