激戦の東京五輪男子100m切符争いに異変?…9秒台出ずとも桐生祥秀が大会1年前に新国立で優勝した意味とは
2位のケンブリッジは7月24日の東京選手権を10秒22(-0.8)の大会新で優勝。2戦目はさらに上げてきた。 「予選はある程度、目標にしていたタイムで入れたんですけど、決勝は少し物足りない感じで終わっちゃったのが残念ですね。桐生君は強かったですが、後半はいいかたちで走ることができませんでした。それは東京選手権でも感じていた部分です。本来なら少し乗り込んでいけるところで、腰が抜けるようなイメージがあった。そこを修正できれば、ラストはもう少しいい走りができるかなと思っています」 桐生は前半部分、ケンブリッジは後半の走りに課題を残したが、ふたりの仕上がりは順調と見ていいだろう。一方、多田と小池、それから山縣は良くなかった。 多田は7月23日の大阪選手権を10秒46(-0.5)で制しているが、まだまだ状態は上がっていない。 「アップのときは調子がいいのかなと思っていたんですけど、いざ試合になると噛み合わない部分があった。後半は力んでしまいましたし、僕の持ち味であるスタートも置いていかれた感じがあった。まずはそこを取り戻さないといけないなと思いましたね。10秒30台後半のタイムなので、練習量も足りていないと思います」 小池は7月中旬のダイヤモンドリーグロンドン大会で9秒98をマークするなど昨季は絶好調のシーズンを送ってきたが、8月に腰を痛めてドーハ世界選手権は精彩を欠いた。今季は10月上旬の日本選手権1本に照準を合わせており、今大会がシーズン初戦だった。 「そこそこいい状態に仕上げてきたつもりだったんですけど、思った以上にカラダが軽くて、うまく地面を押すことができなかった。出力は半分くらいですかね。日本選手権に向けては、レースを何本か重ねて、出力を戻していけばいいのかなと思います」 不本意な結果だったが、小池はいつも通り、冷静に自分の状態を分析していた。 小池の大学の先輩である山縣は肺気胸もあり、昨季は苦しいシーズンを過ごした。今季は今大会が初戦で、前日会見では「昨年の大会が10秒11だったので、それを上回るタイムを目指して頑張ります」と話していた。しかし、想定外の結果になった。ここからどう立て直していくのか。 なお今大会は出場しなかったサニブラウンはプロに転向して、昨年12月にはプーマとパートナーシップを締結。練習拠点もフロリダ大から、「タンブルウィード・トラッククラブ」に変更している。サニブラウンは高校を卒業した後に、同クラブのコーチを務めるレイナ・レイダー氏(当時はオランダチームのコーチ)の指導を受けて、その年(2017年)のロンドン世界選手権で男子200mの最年少ファイナリストに輝いた。再び、レイダー氏とタッグを組んで、今度は世界大会の「メダル」に挑戦することになる。