ソニーが「KADOKAWA買収」で直面する3つの難題、クセの強い2社がタッグを組むのは簡単でない
ソニーグループがKADOKAWAの株式取得に向けた交渉を進めている。「買収」との報道が出た11月19日以降、KADOKAWAの株価は急上昇。11月18日の終値3045円から、足元は4割以上高い4000円台で推移しており、株式市場は熱を帯びている。 【写真】ソニーもアニメやゲームのグッズを展開するが・・・・・・ 両社がタッグを組むことで期待されるのは、ソニーが力を入れるエンターテインメント事業と、KADOKAWAが抱えるIP(知的財産)とのシナジーだ。 ■フロム・ソフトウェアの魅力
すぐにでもシナジーが見込めそうなのがゲーム事業である。ソニーは家庭用ゲーム機「プレイステーション5」を販売するほか、定額制のゲーム配信サービス「プレイステーションプラス」を運営する。同サービスは3つの料金プランがあるが、ソニーは高額プランへの加入者を増やそうとしている。 一方、KADOKAWAは子会社に『エルデンリング』『ダークソウル』など、それぞれ2000万本以上を売り上げる大ヒット作を生んだゲームソフトメーカーのフロム・ソフトウェアを抱える。2022年にはフロムに対し、中国IT大手テンセントの子会社が16%超、ソニーのゲーム子会社ソニー・インタラクティブエンタテインメントが14%超を出資している。
ソニー傘下となり、フロムが開発するゲームソフトを一定期間でプレイステーションで独占配信することができれば、新たな会員獲得やサブスクリプション会員の維持に貢献する可能性が高い。競合するマイクロソフトの「Xbox」、PCゲームの「Steam」などに対し差別化も図れる。 アニメとその周辺ビジネスでも、相乗効果は大きい。今年4月の経営方針説明会でソニーの吉田憲一郎会長は「アニメは世界に通用するエンターテインメントだ。ソニーもクリエーションで貢献していきたい」と述べるなど、ソニーはアニメ事業に注力する姿勢を明確にしている。
アニメ事業の中核は製作会社のアニプレックスと、2021年に買収した海外向け配信プラットフォームのクランチロールだ。例えば、今年5月の経営方針説明会で十時裕樹社長が取り上げた5つのアニメ(冒頭写真)は、すべてソニー傘下のアニプレックスが製作に深く関与している。 ただ、「鬼滅の刃」は集英社、「WIND BREAKER」は講談社、「俺だけレベルアップな件」はKADOKAWA、「マッシュル」は集英社、「ぼっち・ざ・ろっく!」は芳文社というように、版権元の出版社はさまざまだ。共同作業は得意でも、ソニーはコンテンツの原石を掘り起こしたり、グッズ展開までを一気通貫で行うノウハウに乏しい。