ソニーが「KADOKAWA買収」で直面する3つの難題、クセの強い2社がタッグを組むのは簡単でない
■メディアミックスに知見 一方のKADOKAWAは、ライトノベルやマンガの編集者からアニメのプロデューサー、関連グッズの企画担当者まで、関連ビジネスをすべて社内で完結できる垂直統合型のビジネスモデルを強みとする。 KADOKAWAが得意とするメディアミックスの知見は、アニメ事業の世界展開を目指すソニーにとっての起爆剤となる可能性がある。しかし、市場が期待するような相乗効果を実現するためには超えなければならないハードルが少なくとも3つある。
1つはどのようなスキームで株式を取得するかという問題だ。「買収」と報じられてはいるものの、交渉は初期の段階で、ソニーがKADOKAWAの完全子会社化を目指すのか、株式の一部を取得するつもりなのかは判然としない。 KADOKAWAの株主構成を見ると、韓国IT大手のカカオが約9%を保有するほか、2021年から資本業務提携関係にある中国IT大手のテンセントが約7%などとなっており、買収を阻むような大株主はいない。
とはいえ、完全子会社化となれば相応の資金が必要だ。TOB(株式公開買い付け)となった場合の想定価格は、マッコーリーキャピタル証券の試算によると4600円、完全子会社化となれば総額6400億円以上の大型買収案件となる。 ソニーは2026年度までの中期経営計画で、機動的な自己株式の取得を含めて1.8兆円という投資枠を設定している。 足元では楽曲版権の取得費用がかさんでおり、イギリスのロックバンド「ピンク・フロイド」や「クイーン」の権利取得に数百億円から数千億円単位で資金を投じていると報じられている。ゲーム事業でのスタジオ買収費用なども考えると、懐に大きな余裕があるわけではない。
単に両社が提携関係を強化するだけなら、持ち分法適用会社化では発行済み株式の15%以上、子会社化でも50%前後の取得でよく、いきなり全株式を取得する必要はない。 親子上場による利益相反の回避や、東京証券取引所プライム市場の上場維持基準である流通株式比率で65%以上を維持できるかといった課題はあるものの、KADOKAWAが上場し続けることも選択肢の1つだ。 ■対抗馬出現の可能性も 株式取得のスキームが確定しても、次のステップであるTOBがすんなり成立するとは限らない。