“虎の怪物”佐藤輝明が21、22号を連発できたワケ…大人のスイングへの進化
さらに虎党を歓喜させる瞬間が続く。 4回に2-2の同点にされ迎えた6回。先頭打者の佐藤は1-1からインローに投じられたストレートを今度は引き込んで逆方向へと振り抜いた。高々と上がった打球は無人の左中間スタンドの前列に飛び込んだ。2打席連続の22号は価値ある勝ち越しアーチとなった。 「逆方向の当たりだったので、その点も良かったかなと思います。逆方向に(ホームランが)出るときはいいとき。(今は)とてもいい状態かなと思います」 それが好調のバロメーター。佐藤はヒーローインタビューで絶好調宣言をした。 4回二死満塁の押せ押せの勝ち越し機に浜口に代打を送らず、球数が100球を越えた6回も続投させた三浦監督の采配も裏目に出た。ハマスタの「鳩サブレ―」の看板を越えていく衝撃の場外アーチに象徴されるように、とにかく横浜DeNAは佐藤にカモにされている。この日の2本塁打、3安打、3打点を加えて、打率.328、5本塁打、14打点は、セの5球団の中で最も打たれている数字だ。 試合後、三浦監督は、さすがにあきれた様子で「一人の打者に3打点ですか? 対策を考えていたが、打たれたってことですね。1点ずつですが…。また明日、いろいろと考えながら攻めを考えたい」としかコメントできなかった。 7月7日のヤクルト戦以来、11試合ぶりの1発。プロの遠征と連戦のスケジュールに「移動が大変。プロ野球ってこんなに過酷でしんどい職業なんだなと感じている」と漏らしていた佐藤にしてみれば、五輪の中断期間が、心身共に蓄積した疲労をリフレッシュさせるいい休養になったのかもしれないが、驚くべきは、この間を利用して、さらなる“進化”を遂げたことだ。 この2本のアーチは、いずれも“マン振り”したものではなかった。下半身で主導。力が抜けてバットだけが走るスイングである。だから軌道もぶれない。ややグリップの位置を下げ、特にバックスイングが小さくなっていた。力んだフルスイングに見えないのは、そのせいである。やんちゃな“ガキのスイング”から、無駄なぶれのない“大人のスイング”に変貌したとでも表現すればいいのか。 浜口の制球力不足という不調も手伝ったが、佐藤のデータを調べ尽くしていたはずの横浜DeNAバッテリーが痛い目にあったのは、その進化というデータが想定外だったのだろう。 ただ最終打席では、左腕の櫻井周斗に対して三振を喫した。三振数は、セのワーストを突っ走る126個目である。 佐藤は「(ここまでを振り返って)うまくいっている部分もある。まだまだだなあという部分と両方あります」とも語ったが、“大人のスイング”をモノにできれば、後半戦の三振数も減っていくのかもしれない。