「多様性をアピール」「しかし貧乏な日本人は静かに排除」…。東京で急増する、似たり寄ったりな“金太郎飴”商業施設が抱えた矛盾
■東京で進む「貧しい日本人」の排除 以前、私は「東京で『お金のない若者』が排除され起きている事 ディズニーも高嶺の花、カフェすら混んで座れない」で、都心で進む再開発が「若者の静かな排除」を起こしているのではないかと問題提起した。 【画像で見る】すでにガラガラ? 金太郎飴な商業施設たち 再開発後のビルの高級化によって、消費に使えるお金を多く持たない若者たちが、おのずと街で活動できる範囲が狭められているのではないかという意見だ。 もちろん、これらは基本的に企業の活動の結果であり、それらを批判するのはお門違いかもしれない。筆者も、企業が利益を求める活動を否定はしないし、どんどん儲ければいいと思う。
ただその一方で、街を散策していると、こんなふうにも感じられる。 「富裕層やインバウンドをターゲットにした結果、金太郎飴のようなビルばかりできている気がする……」 【画像11枚】「多様性をアピール」「しかし貧乏な日本人は静かに排除」…。東京では今、“金太郎飴”商業施設が急増している ブランディングの基本は差別化である。にもかかわらず、似たりよったりなビルなのは、長期的に見てまずいような気もするのだ。また、短期的な観点での投資が先行し、建物や施設が長期的な魅力を持てなければ、その地域の衰退に繋がりうるのは、バブルの歴史が証明している。
この、“都心のビル金太郎飴問題”(今、そう名付けた)を考えるにあたって、都心部でどんなビルが増えているのかを振り返っていきたい。 いま、都心の再開発で乱立するビルには、多くの場合「共通点」がある。実はこの共通点を考えるうえで面白いヒントを与えてくれるのが、Netflixで大ヒットした『地面師たち』である。新庄耕の大ヒット小説を映像にしたもので、架空の土地取引で巨万の富を得る「地面師」の暗躍が描かれるクライムサスペンスだ。
作品は、白金にある巨大な土地の架空売買をめぐって進んでいく。注目したいのは、だまされる側の不動産デベロッパー「石洋ハウス」が、その土地の取得後に建設予定の施設だ。気になる人はエピソード4の34分あたりを見てほしいが、そこでこの施設のパンフレットが登場する。いわば、フィクションの再開発案なのだが、この解像度がすごいのだ。 名前を「高輪COROX」といい、スローガンは「多様性の国際交差点」。正確な高さはわからないが、ある程度の高層ビルで、よく見ると中層階は「HOTEL FLOOR」、そしてその下には「OFFICE FLOOR」。どこかで見た配置だ。