「多様性をアピール」「しかし貧乏な日本人は静かに排除」…。東京で急増する、似たり寄ったりな“金太郎飴”商業施設が抱えた矛盾
さらに、低層階には独特の建築が施されている(木組みを使っていて、どことなく隈研吾っぽい)。そして地上には謎の「アートっぽいオブジェ」が置かれ、その周辺は適度に植樹がされている……。 なんだか見覚えがある。というか、見覚えしかない。 ■ホテルとオフィスとアートと植栽と… 例えば、麻布台ヒルズ。中~高層階にはオフィスフロアがぎっしりとあり、さらに日本初進出のアマンの姉妹ホテルブランド「ジャヌ東京」も入る。低層階で目を引くのは世界的建築デザイナーであるトーマス・ヘザウィックによるきわめて独創性の高い建築。中庭にはさまざまなアート作品が置かれ、植栽も施されて緑豊か。
「高輪COROX」との違いといえば、高層階にレジデンスが入っていることだろうか。ただ、これも一部はホテルブランドのアマンがやっているから、ある意味でホテルの延長線上のようなものかもしれない。 これから建設予定のビルでも、同じような構成のものが多い。 例えば、2027年竣工予定で完成すれば日本でもっとも高いビルとなる「TOKYO TORCH」。デベロッパーは三菱地所だが、中層階にはぎっしりオフィスが入り、高層階には「ウルトララグジュアリーホテル」が入居。そして、低層階には独特の曲線が見られる建築があり、地上にはいい感じに緑がある。
似ている。似すぎている。 ■似たようなビル…マーケティング的に失敗では? 「高輪COROX」がここまで現在の再開発ビルの特徴を捉えるのには、理由がある。というか、現在のさまざまな状況を踏まえれば、こうならざるをえないからだ。 都心部の狭い土地で、大規模に再開発を進めるとなれば、ある程度そこにできる建物を高くしないと工事費をペイすることはできない。建物が高くなり、床が増えれば増えるほど、賃貸面積が増えるからだ。『地面師たち』で問題になっている土地も、寺に隣接した駐車場であり、そこまで広いわけではない。