「多様性をアピール」「しかし貧乏な日本人は静かに排除」…。東京で急増する、似たり寄ったりな“金太郎飴”商業施設が抱えた矛盾
また、もともとそこの土地に住んでいる地権者が持ち出しをすることなく、同じ土地に再び入居することができる、いわゆる「権利変換」を行えることもあり、高層化は「魔法の杖」ともいえる。 さらにはこうした方法については、国からの補助金が出るケースも。だから高層化が進むのだ(NHK取材班『人口減少時代の再開発 「沈む街」と「浮かぶ街」』)。 さらに短期間での利益回収を目論むなら、よりそこでお金を落としてくれる富裕層向けのホテル、さらにはある程度長期での賃貸を目論むことができる大企業のオフィスなどを誘致するのが早い。簡単に言えば、「高級化」したほうが、手っ取り早いのだ。
また先ほど、こうしたビルが基本的には「富裕層」などをターゲットに作られていることを示したが、よくよく出来上がったビルを見てみると、「これって本当に富裕層向けなの?」と思ってしまう建物があることも指摘され始めている。 ■富裕層、インバウンド向けビルに出る「ガラガラ」投稿 例えば、新宿に誕生した東急歌舞伎町タワー。百年コンサルティングの鈴木貴博氏はこのビルについて、海外富裕層向けのホテルが上層部に立地しているが、ホテルの中にはブランドショップなどが入居しておらず、海外富裕層向けの客層とのミスマッチが起こっていると指摘している(ただし、それは歌舞伎町という街の特性上、なかば意図的だ、と文章は続いている)。
こうした影響が強いと一概には言い切れないが、昨年開業した麻布台ヒルズもこのところ「ガラガラ」報道が後を経たないし、渋谷にできた「Sakura Stage」も高級店が入るフロアは人がいない、というツイートが拡散されたりもしている。 再開発したのはいいものの、「人がいない」報道が、結構されているわけだ。 ……と、こういった指摘や報道を見ているなかで、筆者の中にある可能性が浮かんだ。 「こういった富裕層やインバウンド向けのビルを作っているのは、日本の会社員たちだ。大企業勤務といっても、世界から見れば富裕層とは言いがたい……もしかすると、富裕層のニーズがわかってないんじゃないか? だからこそ、金太郎飴みたいな、魅力に乏しいビルができてしまっているのではないか?」