「多様性をアピール」「しかし貧乏な日本人は静かに排除」…。東京で急増する、似たり寄ったりな“金太郎飴”商業施設が抱えた矛盾
これは、短期的な視点に立てばすぐに利益を上げられるかもしれないが、長期的な視点に立ったとき、本当に社会的な利益になるのか、ひいては企業の継続的な利益につながるのかが難しい。 そこで吉江が提唱するのが、開発に手間がかかったり、すぐには利益が出なくとも長期的な視点で利益があるように開発を調整していく「迂回する経済」の重要性だ。 ■提唱される「迂回する経済」とは? 例えば商業施設をテナントで敷き詰めるだけでなく、あえて広場を作って人が滞留できるようにしてみる。
短期的にはテナントがたくさんあったほうが利益が出るかもしれないが、長期的に見ればそこに人が集い、愛着が生まれるほうが、エリア全体の価値が上がるのではないか。 経済活動をシャットアウトするわけではなく、経済活動を行ったまま、それが長期的な視野で見ても回っていくような経済のあり方、都市開発のあり方を提唱するのだ。 まさに、現在の東京を考えるとき、この「直線の経済」による都市開発のシワ寄せが来ていると思えてならない。激混みするカフェ、MIYASHITA PARKに集まる若者、不自然に作られたバリケードに、激増する富裕層向けのビル……。
一方、大阪に目線を移すと、昨今話題の「うめきた公園」にある商業施設「うめきたグリーンプレイス」では、吉野家やケンタッキーフライドチキンのほか、「大阪王将」系のベーカリーなど、手頃なテナントを入れることで、富裕層やインバウンドに頼らない戦略が行われており、ネット上でも話題や称賛を集めている。(JR西日本、うめきた飲食店は「あえてチェーン」 公園に的(日本経済新聞/2024年11月9日) 大阪の盛り上がりを見るたびに、「経済活動は進めつつ、しかしもっと長い目で多くの人がよりよく暮らせる都市を、私たちは考える時期に来ているのではないだろうか?」という気持ちが浮かぶ。今後も東京に建つ、金太郎飴のようなビルを見るたびに、私はこの街の未来が心配になってしまうのだ。
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谷頭 和希 :都市ジャーナリスト・チェーンストア研究家