「金融市場調節方針は現状維持」日銀・黒田総裁会見1月18日(全文1)
わが国経済を巡る不確実性は極めて高い
リスク要因を見ますと、引き続き海外の経済・物価動向、今後のウクライナ情勢の展開や資源価格の動向、内外の感染症の動向やその影響など、わが国経済を巡る不確実性は極めて高いと考えています。その下で金融・為替市場の動向や、そのわが国経済物価への影響を十分注視する必要があります。リスクバランスは経済見通しについては、2022年度と2023年度は下振れリスクのほうが大きいですが、2024年度はおおむね上下にバランスしているとみています。物価見通しについては、上振れリスクのほうが大きいとみています。 日本銀行は、2%の物価安定の目標の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで長短金利操作付き量的・質的金融緩和を継続します。マネタリーベースについては、生鮮食品を除く消費者物価指数の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで拡大方針を継続します。その上で、当面、感染症の影響を注視し、企業等の資金繰り支援と、金融市場の安定維持に努めるとともに、必要あればちゅうちょなく追加的な金融緩和措置を講じます。政策金利については、現在の長短金利の水準、またはそれを下回る水準で推移することを想定しています。以上です。
物価高の状況でも緩和を継続する必要性は
記者:ありがとうございます。では幹事社から2問お尋ねさせていただきます。まず物価の見通しの引き上げについてです。総裁がかねてからおっしゃっている2%の物価安定目標が、持続的・安定的に達成される状況にかなり近づいているように見受けられます。一方で物価高は家計や企業に重くのし掛かっています。あらためてこうした状況でも緩和を継続する必要性をご説明いただけますでしょうか。 次はイールドカーブ・コントロールについてです。先月の金融政策決定会合で、長期金利の変動を拡大しました。長期金利はその後、上限の0.5%を超え、イールドカーブのゆがみも解消されておらず、YCCはうまく機能していないように見受けられます。異例の金融政策であるYCCの限界を指摘する声もあります。こうした金利の動きを、総裁、どう捉えていらっしゃるのか、変動幅をさらに拡大する必要はないのか、ご見解をお聞かせください。 黒田:まず第1番目の質問につきましては、生鮮食品を除く消費者物価の前年比は、足元では3%台後半となっていますけれども、来年度半ばにかけて、2%を下回る水準までプラス幅を縮小していくと予想しています。 消費者物価の基調的な上昇率は、マクロ的な需給ギャップの改善や、中長期的な予想物価上昇率や賃金上昇率の高まりなどを背景に、物価安定の目標に向けて、徐々に高まっていくと考えています。ただし、それにはなお時間がかかるとみておりまして、物価安定の目標を持続的・安定的に達成できる状況が見通せるようになったとは考えておりません。 やや詳しく申し上げますと、今回の展望レポートにおける生鮮食品を除く消費者物価の見通しの中央値は、2023年度は1.6%、2024年度は1.8%となっています。前回の見通しと比べますと、2024年度が幾分上振れていますけれども、これは政府によるガソリン・電気・都市ガス代の負担緩和策による押し下げの反動によるものであります。この点、エネルギー価格の変動の直接的な影響を受けない生鮮食品、エネルギーを除く消費者物価の見通しを見ますと、2023年度は輸入物価の上昇を起点とする価格転嫁の影響から幾分上振れ、1%台後半となっていますけれども、2024年度は前回並みの1%台半ばであります。また、わが国経済はコロナ禍からの回復途上にある上、海外の経済・物価情勢やウクライナ情勢、あるいは感染症の影響など、わが国経済を巡る不確実性は極めて大きい状況にあります。