好き嫌い分かれる「大胆」デザイン BMWを変えたクリス・バングル 忘れられないクルマたち
BMW X3(2003年)
BMWがSUVに深く踏み込んでいく中で、バングルは1990年代に使われていたマトリョーシカ的(見た目は同じでサイズだけ違う)スタイリングには戻れないと主張した。初代X3は、当時発表を控えていた5代目3シリーズと多くのパーツを共有していたが、フロントのキドニーグリルを除いて、デザインの共通性はなかった。 また、単なるX5の小型版でもなかった。スポーティかつハンサムなデザインと、SUVセグメントの成長に関するBMWの的確な予測が相まって、X3は大成功を収めたのである。
ロールス・ロイス・ファントム(2003年)
1998年にBMWがロールス・ロイスを買収したことで、バングルは新たな部門を統括することになった。英国ブランドであるロールス・ロイスは、姉妹会社ベントレーとの分裂騒動で工場とV8エンジンを失っていたため、潔癖症で知られるターゲット層を怒らせないような新しいデザイン・アイデンティティを採用する必要があった。 バングル指揮の下、デザインに当たったマレク・ジョルジェヴィッチは、エレガンスとタイムレスを探求し、過去のデザインの殻に閉じこもる必要はないということを証明した。
BMW 1シリーズ(2004年)
CS1コンセプトに酷似した1シリーズが、新たな市場セグメントへと踏み込んだ。バングル率いるデザイナー陣は、フロントとリアエンドをトーンダウンさせたが、彫りの深いサイドとアーチ状のロッカーパネルは残した。この基本デザインから、2つのハッチバックモデルに加えてクーペとコンバーチブルが生まれ、バングルの筆致の弾力性を示した。
BMW 3シリーズ(2004年)
BMWの主力モデルである3シリーズは、上位モデルほどには過激なデザイン変更を行わなかった。簡単に言えば、新しいことに挑戦して失敗するリスクを冒す余裕はほとんどなかったということだ。会社の存続は3シリーズの継続的な成功にかかっていたのだ。それでもバングルのデザインチームは、5シリーズや7シリーズの縮小版ではなく、独自の外観を持たせた。
BMW X6(2008年)
X6はバングルのチームの新たな挑戦だった。大胆さの欠如、あるいは常識への配慮ゆえに、それまで誰も手を出さなかったセグメントへの先駆的な挑戦であった。バングルは通常、BMWの各モデルを差別化するために多大な努力を払うが、初代X6と2代目X5は正面から見るとほとんど同じだ。