家の猫の話 Vol.2/執筆: ピエール瀧
皆さんは猫とのスキンシップってどんなモノを想像してます? 呼ぶときてくれる、膝の上に乗って丸くなる、布団に入ってきて一緒に寝てくれる、足元ですりすりしてくれる的なやつ? 家の猫の話 どれもが愛らしく、猫を飼ってみたい人には憧れのシチュエーションかもしれませんが、ウチの猫たちにそれらを要求しても無駄です。 名前を呼んでも全然寄って来ませんし、なんならほとんどの場合は完全無視です。 向こうからオイラの膝の上に乗ってきてくれた回数は、コンブがついこの前やってくれた1度だけ。16年も一緒に暮らしてて。むしろその1回がなぜ乗ってきてくれたのか心配になる程です。「もしかして別れの挨拶⁈」ってちょっと困惑しましたもん。 「実は膝の良さを知らないんだな、キミらは。わかった。教えてあげよう」なんつって、よいしょと抱っこして膝に乗せることもあるのですが、コロッケは5秒、コンブは3秒、ブイヨンは手を離した瞬間に業務終了とばかりに膝を降りて、ぷいとどこかへ行ってしまいます。ドライだわ。 “一緒に寝る”は、過去一度やってみたことがあるのですが、奴らの夜行性の性質が深夜にMAXに高まってしまい、ベッドの上を複数の猫が高速で立体追いかけっこをし、さらに顔を蹴られるという被害が発生してから我が家では禁止になりました。 最後の“足元ですりすりしてくる”だけはたまにやってくれるのですが、それは愛情というよりも「ご飯まだですかね?そろそろなんじゃないですかね?」という連絡事項としてやってきます。夕方のキッチンとかで。「おーい!腹へった」の強めの鳴き声と共に。 このすりすり動作ですが、正確にはすりすり半分、頭突き半分の割合です。この頭突きの動作は要求の時に見られることが多く、オイラの中では“脳をぶつけてくる”と呼んでいます。 他の猫にブラッシングをしているとき、エサ箱を開けて準備しているとき、おもちゃでもっと遊んでほしいときなんかに脳をズンとぶつけてきて、欲求の大きさと素早い対応をアピールしてきます。しかもまあまあの強度で。 自分が猫と対峙しているときにこれをやられるときはまあ良いのですが、時に虚をついてやってくることがあるのが難点です。 リビングのテーブルで熱いスープを飲んでるとき、カップラーメンを啜ってるときなんかに突然これをやられると、猫の頭で押された肘から連動した動きが手元をおぼつかなくさせ、結果口元のカップから大量の熱湯が顔面に流れ込み、「熱っ!」と悲鳴をあげることがあるのです。これはたまに「こいつらわざとやってるな」と感じることがあります。なぜならすぐどこかに逃げて行くし、遠くで毛繕いをしてる感じがなんか笑いながら誤魔化してる感じがするので。
プロフィール
ピエール瀧 ぴえーる・たき | 1967年、静岡県出身。1989年に石野卓球らと電気グルーヴを結成。道行く人に「あなたのオススメは?」と尋ね、その返答の通りに旅をするYouTube番組『YOUR RECOMMENDATIONS』が好評配信中。著書に『ピエール瀧の23区23時』(産業編集センター)、『屁で空中ウクライナ』(太田出版)など。3月1日(金)より、主演を務める映画『水平線』が全国順次公開中。 photo & text: Pierre Taki, edit: Ryoma Uchida
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