仁科亜季子「38歳から4度のがん〈幼い我が子たちを残して逝けない!〉と。〈2時間前は過去〉だから起きたことを悔やまない」
◆泣いて生まれたから笑って死にたい こんな性格ですから、がんになったからと言って、決して弱気にはなっていません。「また病気になるといけないから、無理をしちゃいけない」とも思わない。 がんであったことは引きずらず、その都度、できるお仕事はやってきましたし、習いごとが好きなので、日本舞踊や三味線のお稽古、ボイストレーニングのレッスンにもせっせと通っています。 とくに、40代半ばで離婚を経験して以来、毎日を幸せに過ごすために私が大切にしようと心がけているのは、「元気、陽気、強気、やる気、勇気」の「5つの気」です。 人間は何をするにしても、まずは「元気」が必要でしょう。私の場合、人生の最期まで自分の足で歩いて日常生活を送れるくらい元気でいたいので、毎朝、脚のストレッチや体操をしたり、骨粗しょう症を防ぐためのカルシウム製剤とビタミンDを飲んだりしています。 また、笑っていると、脳内で幸せホルモンが分泌され、免疫力もアップするそうなので、常に「陽気」でいるに越したことはありません。悲しいときや切ないときでも、作り笑いをすると、脳が「幸せなんだ」と思い込むと聞いたので、気分が晴れない日には、鏡を見ながらニコッと笑ったりしています。 そして「強気」。もともと頑固で負けず嫌いな性格というのもありますが、「強気」だったから、病に負けずにいられたのでしょう。 「やる気」は、年齢を重ねるとどんどん衰えてくるじゃないですか。「暑い」「寒い」というだけで、何かをやろうとする気力が失せていく。それでも、友達と食事に行ったり、買い物に出かけたり、とりあえず一歩外に出てみれば何か楽しいことがあるだろうと、ちょっぴり自分の背中を押すようにしています。 雨の日も、家の中で不用品の整理をしたり、靴を磨くなどして過ごせば、「今日は充実していたな」と感じることができますし。
そして最も大切なのが、何ごとも自分で決めた方向に進んでいく「勇気」。人生って、何をするのも選択の連続ですよね。がん治療のような大きな選択でなくても、たとえば喉が渇いたときに、お水にするのかお茶にするのかといった些細なことでもそう。 いったんお水と決めたなら、潔く水を飲む。やっぱりお茶にすればよかったかも、とは考えない。そんな勇気を持つことが幸せな生き方に通じるのではないでしょうか。 もうひとつ、私の幸せに欠かせないのは家族の存在です。子どもたちもすっかり大人になり、今はそれぞれに家庭がありますが、嬉しいことに、すぐ近所に住んでいます。娘の家は、私の家から歩いて70歩という近さ(笑)。おかげで、小学生になった孫とも毎日のように会えますし、それぞれの家族と食事をしたり、一緒に出かけることもしょっちゅうです。 子どもたちや孫に囲まれた現在の生活はとっても幸せです。70代になった今、何ひとつ不満はありません。大病の経験がまったくない人も、私のように4回がんになった人間でも、誰の人生にも等しく終わりがやってきます。 それに、人間は泣いて生まれてきたんだから、笑って死にたいじゃないですか。家族や周囲の人たちに感謝しながら、「ああ、楽しかった」と笑顔で人生を終えることができたら最高だと思っています。 <仁科さん流 幸せの極意> 「2時間前は過去」だから起きたことを悔やまない (構成=内山子、撮影=須藤敬一)
仁科亜季子
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