大阪熱狂!那須川天心が最強ムエタイ王者の額を必殺技で割り「殺傷能力がついた」と豪語
適応能力を発揮しながらの攻勢で1、2ラウンドは確実にポイントでリードしていた。それをタイ陣営も計算していたのだろう。3ラウンドになってスアキムは勝負をかけてきた。そうなると雑になり隙が出る。天心が1、2ラウンドに仕掛けた罠である。必殺の胴回し回転蹴りでの決着は必然だったのかもしれない。 格闘技において再戦は心理戦だと言われる。互いに手の内を知ったもの同士だからこそのプレッシャーが生まれる。 だが、天心は「プレッシャーは一切なかった」と言う。 「やってきたことをやろうとだけ意識していた。そこは多少出せた」 昨年は、総合のトップファイターである堀口恭司とのキックマッチに始まり、大晦日のフロイド・メイウェザー・ジュニアとのボクシングルールによるエキシビションマッチをハイライトに「那須川天心にボクシングルールで勝ったら1000万円」シリーズや、その関連での元3階級王者、亀田興毅とのエキシビションマッチ、RIZINでの3冠戦などのハードスケジュールを消化していく中、天心は疲弊することなく、その一つ一つの経験をエネルギーに変えて急速に進化してきた。 だから1年と5か月前のスアキム戦の後に感じた「怖さ」は、今回の試合後には現れなかった。 「スアキムは、さすがチャンピオン。強いなと思いました。一発一発のパンチもありました」。そういう相手にKOでの完全決着をつけるために、本来のスピード重視の出入りのキックを捨て、リスクを負って倒しに行ったのである。 フックを何発かもらい左目は少し腫れぼったくなっていた。 「リスクをいかに取らないで倒せるかがベストですが、それは難しい。でもそれを目指してやっている。リスクを取らずに、やりたいことをもっとできれば。まだまだ成長できる。これからです」 打たせずに打つ、蹴らせずに蹴る。究極のファイターを目指している。その向上心が急速進化の理由である。だからこそ反省がある。 「疎かになった部分がある。もっとステップを使い、“バン”というより、“パスッ”というイメージでキレのあるパンチを打ちたい。そこを直していきたい。58キロ契約だが、(次は)もっと体重を落とそうと思った。そっちのほうがスピードも上がると思う」 もう次のことが頭に浮かぶ。進化は現在進行形なのだ。 9月16日に千葉の幕張メッセで行われる58キロ以下の世界一を決める決勝戦は、天心が望んでいた日本人対決となった。相手は、タイの“若き至宝”ラジャダムナンスタジアム、スーパーフェザー級王者、ルンキット・ウォーサンプラパイ(17)を延長戦の末、振り切った志朗だ。 「志朗君は強いんで対策をやらないと。一発一発が的確。中でやるのも得意。距離を取って手数を増やさないと厳しい戦いになる」 天心に油断はない。