3人目サンペールの加入は神戸のバルサ化にどんな影響を及ぼすのか?
J1ヴィッセル神戸の7人目の外国人選手として、年代別のスペイン代表に名前を連ねてきたMFセルジ・サンペール(24)の加入が決まり、7日に都内で入団会見が行われた。 6歳だった2001年に祖父の勧めでFCバルセロナのスクールに入団したサンペールは、カンテラと呼ばれる下部組織の各カテゴリーを順調にステップアップ。名門の未来を担う逸材として大きな期待を集め、2014年9月には19歳にしてトップチームでデビューを果たした。 その後は武者修行のために、同じラ・リーガ1部を戦うグラナダやラス・パルマスへ期限付き移籍した。対照的に今回は、今年6月末まで結んでいたバルセロナとの契約を自らの希望で解除しての完全移籍。退路を断って、初めて母国スペインの外へ飛び出すことを決めた。 三木谷浩史オーナーの大号令のもと、積極的に「バルセロナ化」を進めるヴィッセルにとっては、昨夏からプレーするMFアンドレス・イニエスタ、今シーズンから加入したFWダビド・ビジャに続く、バルセロナでプレーした経験をもつ3人目の選手となる。 しかもイニエスタが34歳、ビジャが37歳とベテランの域に達しているのに対し、サンペールは1月に24歳になったばかりだ。入団会見に同席し、サンペールとともに契約書にサイン。熱い抱擁と握手を交わした三木谷オーナーも、興奮気味にこんな言葉を紡いでいる。 「現役バリバリどころか、ますます伸びていくヨーロッパの超一流選手がやってくる。これはJリーグでも久々というか、ほぼ初めてではないか」 アンカーやインサイドハーフを主戦場とするサンペールの加入は、三木谷オーナーが描く夢を加速させるのか。
日本へ発つ直前の記者会見では、バルセロナへ抱く深い愛を強調しながら、新天地ヴィッセルで迎える日々へ「とても大きなチャンスだ」と、サンペールはこんな言葉を紡いでいる。 「僕はやる気に満ちている。自分を信じているし、自分の将来がどうなるかも見えてくるだろう。恐れることなく、自分を試すために僕はこのクラブを出ていく。もちろん自分がどこから来たのかを忘れることはない。このクラブは僕の胸のなかに存在し続ける」 トップチームに昇格してからのサンペールは、実は期待に見合う結果を残せなかった。そして、伸び悩み状態に拍車をかけたのが故障の連鎖となる。特にラス・パルマス時代の昨年1月に負った、左足首の内側側副じん帯断裂と腓骨骨折でサンペールは長期離脱を強いられている。 リハビリの途上でバルセロナへ復帰。再起を期した今シーズンは3部所属のクルトゥラル・レオネサと対峙した、昨年10月31日のスペイン国王杯4回戦で初陣を迎えた。しかし、またもや故障に見舞われて前半33分に退場し、現時点でこれが最後の実戦出場となっている。 期待と現状とのギャップで、サンペールも強い危機感を募らせていたはずだ。そうした状況で、電撃的に動いたのが三木谷オーナーだった。2月25日からバルセロナで開催されたモバイルワールドコングレスに出席した際にバルセロナ側と交渉し、一気に移籍をまとめ上げたという。 バルセロナとの別離となる移籍を決めるうえで、カンテラの偉大なる先輩で、いまも畏敬の念を抱くイニエスタの存在もサンペールの背中を押した。ヴィッセルで再びチームメイトになる選択肢もある、とアドバイスを受けたというサンペールは、入団会見でこんな言葉を残している。 「アンドレスが僕への電話で『ヴィッセルはバルセロナと同じスタイルを標榜しているから、君が日本に来て困ることは何もない。サッカー人生で素晴らしいステップになると思う』と言ってくれたんだ」 バルセロナが有するすべてのカンテラをへて、スクールからトップチームまで登り詰めた選手は、歴代で3人しかいないという。その一人となるサンペールは、今シーズンのヴィッセルに足りないピースを補って余りある可能性を秘めていると言っていい。