3人目サンペールの加入は神戸のバルサ化にどんな影響を及ぼすのか?
セレッソ大阪との開幕戦で、ヴィッセルは0-1で一敗地にまみれた。豪華絢爛に映った布陣に欠けていたのは、最終ラインから正確にビルドアップできるセンターバックと、イニエスタの後方で攻撃を差配し、稀代のプレーメイカーを相手ゴールにより近いエリアでプレーさせられる中盤だった。 1月の移籍市場でヴィッセルはバルセロナでプレーした経験をもつ、ウルグアイ代表DFのマルティン・カセレスとほぼ合意に達していた。カセレスがユベントスへ移籍したことで破談になると、開幕戦後にブラジル人のDFダンクレーを緊急獲得。センターバックの補強に成功した。 残るは中盤の選手となる。本家バルセロナではスペイン代表のセルヒオ・ブスケツがアンカーの位置で、攻守両面で代役の効かない存在感を放ってきた。カンテラ時代からブスケツの後継者と期待されてきたサンペールの加入で、ヴィッセルにもさまざまな可能性が広がってくる。 ブスケツのようにアンカーに入る布陣もあれば、セレッソから加入した元日本代表の山口蛍をアンカーに配置。その前方でイニエスタとサンペールが並ぶことで、ビジャとキャプテンを務める元ドイツ代表FWのルーカス・ポドルスキが相手により脅威を与える布陣も可能になる。 もっとも、否が応でも期待が膨らむ青写真が具現化されるかどうかも、すべてはサンペールのコンディションにかかってくる。故障の連鎖をしっかりと断ち切ることだけでなく、4ヵ月以上も実戦から遠ざかり、著しく鈍っているはずのゲーム勘やゲーム体力を取り戻す作業も不可欠となる。 「全力にチームに貢献することが求められていると思う。ヴィッセルというチームが描くプロジェクトのなかで、(バルセロナの)カンテラで育ったミッドフィールダーとしてどのようなサッカーを、いいプレーを見せられるかに注力していきたい」 入団会見でこう宣言したサンペールが、あふれんばかりの才能を秘めていることは疑いようがない。それでも、国内外におけるサッカーの歴史を振り返ってみれば、故障をはじめとするさまざまな事情でそれらを体現できなかった選手は少なくない。 早ければ敵地で行われる10日のベガルタ仙台戦から、サンペールは出場可能となる。しかし、性急に結果を求めるのではなく、覚悟と決意を胸中に秘めて異国の地に降り立った若き逸材の足元を、チームとしてサポートしていく作業がまずは求められる。 (文責・藤江直人/スポーツライター)