久遠チョコレートの奇跡~20年の格闘の物語
そのチョコレートを作っている豊橋市内の工場には「ベルシステム24」の文字が。久遠チョコレートの取り組みに感銘を受けた「ベルシステム24」が出資し、久遠チョコレートの製造に乗り出したのだという。作った商品は久遠チョコレートの店舗で販売。障害者も雇用し、久遠チョコレートの生産体制を支えている。さらに多様性を学ぶ場として、「ベルシステム24」の社員研修の場としても活用している。 社員のひとりは「作っている方とコミュニケーションできたり、体験もさせてもらって楽しいです」と言う。企業が夏目の思いを後押しし始めていた。 「夏目さんとお会いして、『こういう思いがあるので何かできないか』と。『やりませんか』『やりましょう』と意気投合しました。9~10人の弊社の社員が働いています。『多様性のある働き方を、全ての社員に全ての働き方を』と、取り組んでいます」(景山紳介常務執行役員)
障害者の賃金を10倍にした男~伝説的経営者に挑んだ20年
岐阜・高山市。観光客が詰めかける古い町並みの中に夏目の新店「ABCDEfG~タケシとQUONのお菓子な関係~」飛騨高山店がオープンした。世界的に活躍する有名パティシエ、「シェ・シバタ」の柴田武さんとのコラボ業態。チョコをふんだんに使ったソフトクッキーの店だ。半年前にオープンし、まるでケーキのような柔らかい食感が人気を呼んでいる。 久遠チョコレートと同じコンセプトで、障害者を積極的に雇用。足の不自由な島尻和美もオープン時から働いている。「楽しいです。『できることを中心にやっていこう』というスタイルだから働きやすい」と言う。
障害者が働ける競争力のある店を次々に作っていく夏目だが、その原点はある経営者に言われたひと言だった。夏目が尊敬してやまない経営者が「ヤマト運輸」の故・小倉昌男。「宅急便」という画期的なサービスを作り上げた伝説的経営者だ。 小倉が晩年、私財を投じて開業したのが「スワンベーカリー」。障害者の自立を目的とし、その働く場としてベーカリーを展開した。夏目は大学院生だった24歳の時、「スワンベーカリー」について書かれた本に出会う。