新型コロナ禍で自粛中の世界アスリートはどんなアイデア練習で逆境を克服しているのか?重トラック押し、自宅プール…
新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、世界中のスポーツは、ほぼ停止状態となり、アスリートはトレーニングさえままならぬ状況に追い込まれている。外出禁止や自粛要請により、「ステイホーム」を余儀なくされ、いつも使っているトレーニング施設が使えなくなり、練習パートナーとの合同練習はもちろん、コーチから直接、指導を受けることも難しい。 NFLのスーパースターQBでニューイングランド・ペイトリオッツからタンパベイ・バッカニアーズに移籍したトム・ブレイディは、米フロリダ州タンパの閉鎖中の公園でトレーニングしていたところ、パトロールしていたスタッフに公園から出ていくよう注意されたという。 だが、アスリートたちは、その困難な状況でも創造性を発揮して、独自のトレーニングを続けている。英国の砲丸投げの選手であるスコット・リンカーンもそのひとりだ。 リンカーンは、国内では砲丸投げで10回優勝。東京五輪出場を目指しているが、現在の記録では参加標準記録に約70センチ足りないため、五輪が延期されたことをチャンスととらえ、トレーニングに励んでいる。 リンカーンは、クリスマスなどで練習場が使えない日でも、私有スペースで練習できるようにと、これまでにも、少しずつウエイトトレーニングの用具を揃えてきた。今年3月半ばには、ロックダウンに備えて砲丸投げサークルと足留め材を自ら制作。ガレージのようなスペースに防御ネットを吊るし、そこに向かって投げるようにした。ネットに当たった鉄球が直接地面に当たらないように、タイヤを置くような工夫もしている。 極めつけは2トントラックを押す、まるでプロレスラーがデモンストレーションでするようなトレーニングだ。倉庫が立ち並ぶ駐車場でリンカーンは、トラックを両手で押す。そうするとトラックがゆっくりではあるが、動き出すのだ。トラックを駐車スペースの端から端まで、文字通りの人力で動かすことでトレーニングのひとつとしている。 ちなみにボクシングのWBA世界バンタム級スーパー、IBF世界同級王者の井上尚弥(大橋)も、父が乗りエンジンが切られた乗用車を坂道で押して前へ進むという下半身を鍛えるトレーニングをしていたことがあるという。 ユニークな練習をするリンカーンにメールで取材をすることができた。