生かしきれない観光資源、振興策は 福知山市長選を前に・下
任期満了に伴う京都府福知山市長選挙は6月2日に告示され、現職と新人2人の三つどもえの争いになるとみられる。人口減少による生活環境の変化、コロナ禍後の地域活性化、農林業や経済の振興、老朽化したインフラの整備など、福知山市が抱える課題が山積する中、まちづくりのリーダーに誰を選ぶのか。人口減少▽公共交通▽観光振興の3課題を追った。
■大型連休に利用者ゼロの市直営施設
京都府福知山市は商工業分野では、兵庫県北部を含む北近畿の中心的存在だが、こと観光面では、いまひとつ振るわない。観光資源が無いわけではないのだが-。 2023年の福知山市への観光入込客数は94万人で、地域別にみると、旧市内は77万人。福知山城を築いた明智光秀を主人公にしたNHK大河ドラマの影響で増加した19年の74万人を超えた一方、旧3町への観光客はコロナ禍からの復調が鈍く、地域格差が生じている。 大江町北二の観光・文化施設「あしぎぬ大雲の里」はかつて多くの人が訪れたが、今年のゴールデンウィーク(4月27日~5月6日)期間中の利用者は0人。運営形態が2022年4月から市直営に変わって事前予約制となり、広い駐車場の入り口には普段、カラーコーンとバーが置かれている。 由良川沿いの高台に位置するあしぎぬ大雲の里は、旧大江町が、大江山と並ぶまちの資源・由良川に軸足を移して、流域の歴史、文化を生かして地域の活性化を図ろうと整備したもの。 旧平野銀行を開設するなど、同町北有路地域の経済、文化の振興に貢献した平野家から寄贈を受けた旧邸宅(1909年建築)を大雲記念館として95年に改装。伝統的な和風建築様式を基本にしながら、一部に西洋建築であるキングポストトラス(洋小屋)方式を採用した近代和風建築の先駆けとなる建物で、歴史的、文化的、建築学的に大きな価値を持ち、京都府指定有形文化財となった。 その後、大雲記念館の隣に宿泊できる大雲塾舎、レストラン鬼力亭が整備され、99年にグランドオープン。旧町の直営を経て、市町合併後も含めて長らく第三セクターの大江観光が指定管理者制度で請け負って運営。歴史的建造物の風情を生かし、和装での結婚式前撮り撮影会や着物展の開催、会食会場などとして利用されてきた。 市によると、2017年のピーク時は年間2万6065人が利用したが、22年は大雲塾舎の宿泊、レストランが休業し、コロナ禍もあって2383人まで落ち込んだ。そこで、市は23年に利用促進とにぎわいづくりにと、官民連携の実行委員会を結成し、マルシェ「大雲一畳市」を開催したが、それでもこの年は563人とさらに悪化した。