北陸で断トツの出生率! 原発が"産みやすさ"を支える町の、光と影【福井県おおい町】
地上30mのパノラマビューが売りの展望浴場に、その両脇には屋内ゲートボールなどが楽しめるドーム型施設がふたつ。これらは「原発立地自治体に配られる交付金(電源三法交付金)で建てられたもの」だと町議の猿橋巧氏は言う。 広大な敷地に野球場、サッカー場、フィットネスセンター、パターゴルフ場などが入る総合運動公園は、「若狭湾の入り江の一部を、原発の建設工事で発生した排土で埋め立てた土地」(猿橋氏)だ。 さらに猿、猪(いのしし)、熊など害獣への対策として、町内の山際すべてのエリアに総延長150㎞の金網柵が建設されているが、その事業費十数億円は農林水産省と経済産業省が拠出。「農水省の管轄である獣害対策に経産省が補助金を出すのは異例だが、原発があるからこそ、それが可能になる」(猿橋氏)のだという。 豪華な箱モノや贅沢(ぜいたく)な公共事業は原発立地自治体にはよくある話だが、本郷で3児を育てる30代の女性は、「この町は子育て支援にも力を入れ、その充実度は近隣市町より格段にいい」と自慢げに話す。 「結婚したら婚姻の届け時に祝い金2万円、妊娠したら出産応援交付金として5万円、出産時にも5万円が支給され、保険が利かない不妊治療も年間30万円まで助成。また、妊娠中はすべての保険医療がタダになるから、ここぞとばかりに歯医者に通う妊婦さんがかなり多いですね(苦笑)。 さらに保育料は0歳児から無料(第2子以降)で、預かり保育も小学校の学童も1日100円という安さ。小学校入学前に3万円、中学校入学前に5万円、高校入学前に7万円が進学応援給付金として児童・生徒の保護者に支給されるのも助かります」 さらに、町外校に通う中学生、高校生の通学定期券代の半額が助成、大学・短大などに通う学生の保護者には所得制限ナシで、学生1人当たり2万円を毎月支給(=大学4年間で計96万円を支給)と大盤振る舞い。 結婚後、町内でマイホームを建てる際にも、地元の施工業者に依頼すれば100万円、住宅に県産木材を使えば追加で20万~50万円、親と同一の小学校区内に建てれば100万円と、手厚い住宅購入助成が子育て世代を惹(ひ)きつけている。 結婚、出産、子育て、進学、マイホーム取得まで、これほど充実した家計支援が実現するのも原発があるからだ。 「私が町議に初当選した約40年前は大飯原発1、2号機が稼働していました。当時の町の予算規模は年間30億円程度でしたが、その後、3、4号機が増設されると100億円以上に膨れ上がりました」(猿橋氏) 原発立地自治体には、莫大(ばくだい)な原発関連収入が入る。その主な収入源は、国が支給する電源三法交付金と、電力会社が支払う核燃料税、固定資産税の3つだ。おおい町の昨年度決算を見ると、歳入(約125億円)に占める原発関連収入(約77億円)の割合は61.7%にも上っていた(『おおい町議会だより』10月22日発行号を参照)。 今から約10年前、同町の財政状況を分析した立命館大学教授の平岡和久氏がこう語る。