赤信号無視で車に衝突、10歳児童に「過失割合100%」 自転車事故“増加”で罰則強化、“子どもだから”では済まないリスク
車を運転中、突然自転車が飛び出してきて、ヒヤリとした経験はないだろうか。 兵庫県西宮市で起こった、10歳の児童が運転する自転車と車の衝突事故に関する訴訟において、「自転車側に過失100%」の判決が下った。一般的に、自転車と車の事故においては車側の過失が大きくなるイメージを持つ人も多いだろう。今回なぜ自転車側にすべての責任を認める判決となったのだろうか。(笠井ゆかり) 今年11月、道交法改正によって「自転車への罰則」が強化された
赤信号無視で交差点に飛び出した自転車
衝突事故は、信号機のある交差点で起きた。 車側の信号は「青」を示していたが、向かって左側に塀があり見通しが悪いため、車は徐行して交差点に進入。そこへ、左側から赤信号を無視した児童の自転車が飛び出してきたため、衝突事故が起こってしまった。幸い、車はほぼ停止状態だったため、児童に怪我はなかったという。 後日、車の運転手が児童側に修理費用を求める訴訟を起こしたところ、大阪簡裁は「自転車の責任が100%」との判決を下した。 判決のポイントは以下の通りだ。 ①車側が交差点の手前で速度を落とし、徐行していたこと ②自転車は歩道上を徐行せず走行し、児童は信号を確認していなかったこと ③現場は見通しの悪い交差点で、車側は赤信号を無視して自転車が飛び出してくることを予見できなかったこと 児童側はこの判決を不服として控訴したが、大阪地裁で行われた控訴審でも自転車側に100%の過失が認められ、児童側に約13万円の損害賠償が命じられた。現在、児童側は上告しているという。
車側には、これ以上事故を防ぐ術がなかった
この判決について、交通事故に詳しい外口孝久弁護士は、「本件は要保護性の高い自転車が加害者であるにも関わらず、自転車側の過失が100%だった点に特殊性がある」と話す。 車と、自転車や歩行者との事故では、自転車や歩行者の過失割合が低くなるイメージがあるが、外口弁護士によると、実際に「『交通弱者保護』という概念から、車と比べて、自転車や歩行者は過失割合が低く判断されることがある」という。 歩行者や自転車の過失割合が低く判断される、つまり車の過失割合が相対的に高く判断される理由は、車の運転者には、歩行者や自転車よりも高い注意義務が課されているからだ。 「車の運転者は、危険な機械を操作しており、他者に重大な危害を及ぼす可能性があります。また免許制度のもと、危険を予見・回避するための知識や技能を備えていますし、車両にも危険回避のための機能が備わっています。 そのため車の運転者には高い注意義務が課されており、事故の際には自転車や歩行者と比べ、過失割合が高くなるのです」(外口弁護士) 交通弱者保護の概念があるにもかかわらず、今回「自転車の過失100%」の判決が下ったのは、車側が徐行して交差点に進入するなど十分に注意を払っており、これ以上事故を防ぐ術がなかったことが認められたためだと言える。