北陸で断トツの出生率! 原発が"産みやすさ"を支える町の、光と影【福井県おおい町】
「調査当時、おおい町の町民1人当たりの歳出額は原発のない類似団体の2倍でした。現在は1、2号機の廃炉決定の影響でやや縮小傾向にあるものの、2倍近い水準を維持していると思われます」 こうした原発マネーを土台に、中塚寛・おおい町長は「子育て応援日本一」を掲げ、結婚から子育てまで切れ目のない支援に力を入れる。町議の尾谷和枝氏がこう話す。 「近隣市町より子育てにお金がかからないから、多くの子育て世代が町に転入してきます。同じ理由で、進学などでいったんは町を離れても、結婚や出産を機にUターンする若者も少なくありません。だから高い出生率を維持できているのだと感じます」 ■ファミリー層が暮らす通称"関電村" 「原発で働く関電の従業員は正規雇用の比率も所得水準も高い。関電の協力会社も町民の安定した雇用先で、こういった環境も、おおい町の出生率を高める要因になっています」(平岡氏) 現在、大飯発電所では約2000人が働いている。内訳は、関電の社員が約500人、協力会社の従業員が約1500人だ。そのうち一定数がおおい町で暮らす。 数字は定かではないが、町内にある「本郷こども園」の園児数は約130人、原発の近くにある大島こども園は約60人。両園の園長によると、親が関電か協力会社に勤務している園児の割合は、半数超に及ぶという。 大学や高校などから関電に入社すると、火力、水力、原子力などの各部門に配属される。原子力部門に配属されると、基本的には大飯、小浜、高浜のいずれかの発電所か、美浜町中心部にオフィスがある原子力事業本部が職場になる。 関電では、「原子力部門のほぼすべての機能がおおい町を中心とする福井県嶺南(れいなん)地域に集約されているので、異動先の職場も嶺南地域内になる」(町内に住む関電社員)という。 大飯原発で働く社員の多くは、本郷の小学校裏にある社員寮で暮らす。そこには独身寮やファミリー層向けの社宅が立ち並び、周辺住民から"関電村"などと呼ばれている。ただ、入居する社員の大半が35歳を前に寮を出る。 「社員寮の家賃は3LDKの間取りで3万円程度ですが、35歳から民間のアパートの周辺相場と同じ水準に引き上げられるので、それなら家を買ったほうがいいと、ほとんどの社員が寮を出て居を構えます」(前出・関電社員) 転居先を考えるとき、多くの社員とその家族(主に妻)の頭に浮かぶのが、北陸全体でも飛び抜けたおおい町の子育て支援の充実ぶりだ。 同町は土地開発公社を通じて、その受け皿となる宅地分譲地の造成を町内各地で進めている。こうして関電村の住人たちは、前述の助成制度も活用し、町内の新築一戸建て住宅へと移り住んでいく。