お金をかけるほどいい? どのくらいの頻度で受ける? 人間ドックの最適解(専門家が監修)
Q. がん検診の選び方のコツは?
A. 血縁者のがん傾向を見る 肺がん、胃がん、大腸がん、乳がん、子宮がんという5大がん検診のほか、一部の人間ドックではさまざまながん検診が用意されている。といって、これらすべてをやみくもに受診する必要はもちろんない。 「たとえば飲酒量が多いと食道がんのリスクが増え、魚卵など塩辛いものを好む人は胃がん、喫煙者では肺がんや膀胱がんのリスクが増えます。こうした知識と自分のライフスタイルを踏まえて、がん検診を選択しましょう」 また、早期発見と死亡率低下のエビデンスがなくても、近親者にがん患者がいる場合、そのがん検診を受けてみるのも無駄ではない。遺伝というより、食生活などの環境要因が似ていることで、がんのリスクが増す可能性があるからだ。
Q. バリウムと胃カメラどっちがいい?
A. どちらかといえば胃カメラ バリウムを飲んでの胃レントゲン検査と、胃カメラ。どちらも胃がんの死亡率低下に繫がるという報告がある。でも双方それなりにシンドい検査。どちらか一方で済ませたい。 「強いて選ぶとすれば胃カメラです。理由は胃の中の隆起などを直接目で見て確認できるからです。カメラが必ず通過する咽頭や食道の異常も発見することができます。ただ、胃全体に染み込むようにして進行するスキルス胃がんはバリウム検査で発見されやすいといわれています」 胃カメラは2~3年に一度、バリウムは1~3年に一度が推奨頻度。毎年テレコで受診する手もありだ。 ちなみに胃カメラで「オエッ」となるのが嫌な人は鼻から胃カメラを入れる経鼻検査という選択肢もある。
コラム:人間ドックは日本で生まれた文化だった
ある程度の年齢になると、当たり前のように受診している人間ドック。実はこれ、日本独自の医療文化。 最初の人間ドックは1954年、国立東京第一病院(現・国立国際医療研究センター)で行われ、その後、全国の病院に広がったという。背景にあったのは、日本人の死亡原因が結核などの感染症から生活習慣病に取って代わり、早期発見・早期治療が重要視されるようになったこと。 ちなみにアメリカでは患者に医療検査の選択権はなく、家庭医と呼ばれるドクターが指定する検査しか受けられない。ニッポン人はこの恵まれた環境をぜひ生かしたい。 取材・文/石飛カノ(初出『Tarzan』No.869・2023年11月22日発売)