新世代クリエイターと組み、 クリエイタービジネス 事業を推進。大丸松坂屋百貨店・岡崎路易氏に聞く、百貨店の近未来
全世界が市場となりえる可能性
DD:現在の実績はいかがでしょうか? 岡崎:23年に事業自体をリブランディングし、TikTokだけでなくYouTubeショートにも着手し、国内のみならず海外バズも視野に入れた動画制作に注力しています。TikTokアカウントのフォロワーは18万人を超えました。YouTubeショートでは再生回数は4500万回を超えるものもあります。 ただ、4500万回を分析してみると、日本国内で500万前後。残りの4000万は海外で、なぜかミャンマーでとても伸びていたんです。理由はわかりませんが、「エンタメの供給が少ないのかも」という分析をしています。我々が木場にある本社の小さな会議室で撮っている動画を、ミャンマーで笑ってくれている人がいる。そう考えると胸が熱くなりますし、チーム全員のモチベーションになっています。 DD:そういう意味では、全世界が市場となりえる。つまり、メタバース空間なども売り場になりえるということですね。 岡崎:そうです。メタバースプロジェクトが本格的に事業化したのは2023年10月ですが、大丸松坂屋百貨店としては、2020年から「バーチャルマーケット」に期間限定で度々出店していました。そこでわかったのは、メタバース空間には「生活者」がいて、そこで何時間も過ごしている人も少なくないこと。それならば、百貨店として生活者に楽しみを提供することができます。 そこで、まずはメタバースで必須となるアバターの販売を開始してみたんです。「商品」という意味では、メタバースにアバターをアップロードするデータ一式で、価格はおよそ3万円~4万円台。衣装のみは2000円台~3000円台で購入できます。 DD:反響はいかがですか? 岡崎:おかげさまで海外のユーザーさんにお声をかけていただくことが多く、Xでも外国人の方からメッセージをいただくことも少なくありません。グローバルでのコラボも考えられますし、クリエイターと一緒に世界で戦っていくことができると実感しています。 DD:百貨店がコンテンツホルダーになったとも考えられますね。 岡崎:はい。百貨店は洋服やバッグ、化粧品、生活用品、食品などを販売する場所ですが、我々のプロジェクトはIPを売るという考え方かもしれません。実は、弊社のアバターは「芸術性が高く、きれいめ」ということで人気があるんです。バーチャル衣装の質感やデザインに対しても高く評価いただいています。 加えて、モノを売るだけではなく、メタバース事業やアバターに参入を検討されている企業のコンサルティングやサポートも行っています。すでにいくつかのプロジェクトも動いていて、新しいマーケティングソリューションビジネスになりえると考えています。また、クリエイターの作品やグッズを販売するプロジェクトも計画中です。一方で、リアル店舗で原画やバーチャルフォトの展示会を行ったり、クリエイターをお呼びしたイベントをすることもできると思っています。