新世代クリエイターと組み、 クリエイタービジネス 事業を推進。大丸松坂屋百貨店・岡崎路易氏に聞く、百貨店の近未来
クリエイターとビジネスを作り上げ、経済を回す
DD:クリエイターとの協業が始まり、考え方やビジネスの視点が変わったような感覚はありますか? 岡崎:最初にSNS上でバズった「お菓子食べすぎ会社員」は社員がインフルエンサーになりましたし、SNSなどデジタルのなかでクリエイターとして活躍している人がたくさんいるということ、それらは当時の私にとって新しい気づきでした。 かつては一部の芸術家を指したクリエイターという言葉が、いまは大きく概念を広げています。これをビジネスに昇華できれば経済はより回せることができますし、クリエイター自身の成長にも繋がるはずです。 多くのクリエイターはフリーランスや副業など、収益において不安定さを持っています。それに対して、名のある企業の案件をしっかりと獲得して一緒にやっていく。そうすればクリエイターにとって収益の複線化に繋がるのはもちろん、我々にとっても新たな販路を拡大させることができると思うんです。 DD:大丸松坂屋百貨店と実績を作りたいと思うクリエイターも多いのではないでしょうか? 岡崎:はい。たとえば、あるクリエイターの方に「大丸松坂屋と仕事をしたとリリースしてよいか」と聞かれたことがありました。もちろんOKなのですが、理由を尋ねると「大丸松坂屋から依頼を受けるようなものを作っていることを知ってもらい、真剣にクリエイティブを制作していると、いつかこのような老舗企業と一緒に仕事ができるようになることを後進たちに伝えたい」と話してくれたんです。 70年前の日本ではクリスチャン・ディオールがまだあまり知られていなかったように、彼らは今まさに「未知のクリエイター」。我々のような企業が協業することで彼らが認められるなら、それは自分のミッションだと思っています。 DD:老舗企業と新世代クリエイターのコラボレーションに新たな期待を感じます。では最後に、岡崎さんが新事業の推進(あるいはマーケティング)をするうえで大切にしている視点を教えてください。 岡崎:一次情報を大切にすることですね。「こういうのが流行っているらしい」ではダメで、新しいサービスやマーケティング手法は自分で試してみて、一次情報として感じてみることが重要だと思っています。成功するマーケティングやDXの秘訣は、担当者の解像度や経験値。経験値というのは、行った施策の数ではなく「知っているか、知っていないか」です。 DD:なぜそのような考えに? 岡崎:大学院で博士課程をとったときに、ちゃんと自分の足で調べて言語化するということをしっかりやってきたというバックボーンがあるからかもしれません。「自分が知らない状態で、その領域に突っ込んでいいのだろうか」という思考のクセがついたのかもしれませんね。 Written by 島田ゆかり Photo by 三浦晃一
編集部