パイナップルから生み出す究極の循環型社会とは? フードリボン社長 宇田悦子さんに聞く
1トンのパイナップル生産の際に約2~3トンの葉や茎が副産物として生じるといわれ、放置すると二酸化炭素よりも温暖化に有害なメタンが発生する。そんなパイナップルの葉から繊維を取り出す技術を開発し、「捨てるものがない」ほどの循環型社会を目指す企業がある。沖縄県大宜味村に本社を置くスタートアップ、フードリボンは、未利用資源を価値ある素材に生まれ変わらせるだけでなく、農家の所得向上や、地域全体が発展する持続可能なビジネスモデルを探る。2024年9月に東京で開催された日経SDGsフォーラムシンポジウムで「社会を変えるSDGs」をテーマにしたトークセッションに登壇した宇田悦子社長に、天然繊維が持つ可能性や、今後のビジョンなどを聞いた。
起業のきっかけはシークワーサー
――なぜパイナップルの葉に注目されたのでしょうか? 「私は関東出身で、もともと美容関係の仕事をしていました。仕事柄、肌に触れるもの、口にするものについてお客さまに説明することが多く、原料について関心を持ってはいましたが、深く考えることはなかったと思います」 「その後、独立して様々な仕事に関わる中で、沖縄県大宜味村のシークワーサーの未利用資源を知ったんです。当時の沖縄のシークワーサー生産量は年間3600トン。うち1割が生果、9割は果汁で、生産量の半分ほどの重さのしぼりかすが廃棄されていました。皮にも栄養があり、余すところなく使えることを知っていたので、皮の部分を使ったキャンディーやアロマを他の企業とコラボして開発したのが始まりでした」 「大宜味村の隣の東村は、パイナップル生産量が日本一の村です。村長から『次はパイナップルの未利用資源も考えてほしい』と声をかけていただいたんです。パイナップルの葉は剣(つるぎ)状で長く、量も多い。一大産地のフィリピンでは、手作業で繊維を取り出し、糸を紡いで生地にする伝統産業があって、繊細な風合いの生地は海外で伝統的に高級衣装の用途に使われてきた歴史があります。沖縄でも同じことができないかと、2019年に葉から繊維を抽出する機械の開発をスタートしました」