【新連載】郷土菓子研究社・林周作の“世界のお菓子を巡る旅”vol.01|中東アゼルバイジャンのザクザク、甘さの中にスパイス香る「シェチェルブラ」
「シェチェルブラ」専用ピンセットでひとつずつ描く幾何学模様
「シェチェルブラ」の特徴はなんといっても、その形と模様。これは、アゼルバイジャンのある立地や環境が影響しているんだとか。林さん「アゼルバイジャンは、トルコやイランと隣接する国です。そのため宗教や文化など、さまざまな影響を受けています。アゼルバイジャンのある中東の多くがイスラム教で、偶像崇拝が禁止されてきました。そのためモスクなどの神聖なる場所には、神の代わりに幾何学模様が描かれています。祝祭にも使用される『シェチェルブラ』にもまた、幾何学模様が欠かせません。また、『シェチェルブラ』が甘いのにも理由があるんですよ。アゼルバイジャンは昔、シルクロードが通っており貿易国として栄えていました。貴族や権威ある人が、自分の権力を示すために、高価な砂糖を好んで沢山使っていた。そんな歴史的背景が、お菓子に影響しているという説もあります」「シェチェルブラ」の模様は専用のピンセットでひとつずつ丁寧に仕上げていきます。林さんが使用しているのは実際に現地の市場で購入したもの。薄い生地を剥がさないように、力加減を抑えながら次々と模様を作る林さん。その姿は、まるでアゼルバイジャンのシェチェルブラの職人のようです。
濃厚なお茶と一緒に親しまれる。アゼルバイジャン流「シェチェルブラ」の食べ方
現地ではどのように「シェチェルブラ」が親しまれているのでしょうか。林さん「市場に行けば絶対に見かけるお菓子で、子供から大人まで誰からも親しまれています。特に、トルコ式の濃いお茶を一日に何杯も飲むアゼルバイジャンの人々にとっては、お茶菓子のような存在のようです。特に、3月下旬ごろに行われるアゼルバイジャンの祭り“Novruz(ノウルーズ)”には欠かせない菓子。このお祭りは豊作の祝祭として知られ、街は華やかに装飾されます。「シェチェルブラ」は古くから、生活に欠かせないお菓子だったんですね」
NEXT SWEETS |象頭の神様を祀る国、インドの「ベサンラドゥ」
日本から飛行機で11時間以上かかるアゼルバイジャン。読者の中には初めてアゼルバイジャンを知ったと言う人も多いのでは? お菓子から、国や文化を知ることが出来るのも郷土菓子の面白いところです。そして次回は、人口の多さとガンジス川で知られる国、インドが舞台。象の神様ガネーシャの大好物だというお菓子「ベサンラドゥ」を紹介します。ナビゲーター・監修/「郷土菓子研究社」林周作 写真/中里楓 About Shop JOURNEY 東京都世田谷区太子堂2丁目9-25 営業時間:14:00~20:00 定休日:火・水
ウフ。編集部 上野園果
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