2017年は“売り”か“買い”か? 「金」投資とはそもそもどういうもの?
金利については、2015年後半と16年後半にいずれもイエレン米国連邦準備制度(FRB)議長が利上げを行うと発言する都度、金価格は下落していた。利上げの予想は金価格にとっては天敵のようなものである。 FRBのイエレン議長は2月14日米上院銀行委員会で、「利上げを先延ばししすぎるのは賢明ではない」と強調した。次回3月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で追加利上げする可能性も排除しなかった。年3回の利上げの最初は6月までに実施される見込みとなっている。利上げは金価格を押し下げる。 それでは今後の株価はどうか? 問題はトランプ大統領のバラ色の政策が実行されるかどうかである。世界中のマスコミがトランプ大統領を斜めに見る傾向があるが、それでも依然として米国には「大統領は良くやっている」という応援勢力がいることも事実である。彼らはトランプ大統領が米国の経済を再び活気のあるものにしてくれ、生活が楽になることを夢見ている。それが実現すれば、トランプ大統領は2期8年を全うすることもあるだろう。株価も今以上の上昇をみるかもしれない。しかし問題もある。
地政学的リスクと金価格の関係
かつて、2度にわたるイラク戦争のとき、金価格は上昇した。戦争というのはわかりやすい地政学的リスクである。リーマンショック後の世界的な金融危機は、米国から始まって、アイルランド、ポルトガル、スペイン、イタリア、ギリシャ、キプロスなどの政府債務超過問題となり、金価格が上昇した。不動産バブルの崩壊により不良債権をたくさん抱えた金融機関の経営が怪しくなり、倒産を防ぐために政府が国債を発行して金融支援を行った。ところが今度は、その政府の借金である国債の返済が困難になり、いわゆるデフォルトになりそうになった。国債が不良債権になれば、それを保有する世界の金融機関が倒産するというイタチごっこになったのだ。 「金融機関が危険」となると、セーフヘブンとしての金に資金は集まる。 さて、今世界を見回すと、こうした地政学的リスクは見られない。あるとすれば、英国のEU離脱に端を発した脱EUの動きがオランダやフランスなどに波及して、総選挙で反EU政権が発足し、欧州の政治経済体制に亀裂が走ることである。直接的な金融不安とは言い難いが、世の中を不安にする動きはセーフヘブンとしての金の需要を喚起するだろう。