意外と知らない…「鍼治療」独特の“ズーン”という「不思議な痛み」の正体
私たちにとって身近なツボや鍼灸、漢方薬。近年、そのメカニズムの詳細が西洋医学的な研究でも明らかになってきています。例えば<手のツボが便秘改善に効くとされるのはなぜ><ツボに特徴的な神経構造が発見された? ><漢方薬が腸内細菌の「エサ」になっている? >など、興味深い研究が数多く報告されているのです。最新の研究では一体どんなことが明らかになっているのでしょうか。 【画像】なぜか手にある「便秘改善のツボ」、その場所を詳しく知る! 東洋医学のメカニズム研究の最前線をとりあげた一冊、『東洋医学はなぜ効くのか』(講談社ブルーバックス)から注目のトピックをご紹介していきます。今回は、鍼を打つ際に感じる「ズーン」という、あの独特な痛みについて、紹介しましょう。 *本記事は、『東洋医学はなぜ効くのか』(ブルーバックス)を再構成・再編集したものです。
鍼独特の鈍い痛み「ひびき」とは
鍼灸の刺激は、体のなかで神経を通して末梢から脳や脊髄といった中枢へと伝えられますが、その「神経」は複数の神経線維の束です。 実は、痛みをはじめとした感覚刺激は、その刺激の種類によって伝わる線維が異なります。 つまり、同じ目的地に向かう道路でも、一般道と高速道路があるように、複数のルートがあるのです。例えば皮膚を触るような刺激(触覚)と、物にぶつかったときの強い痛みや慢性痛による痛み刺激(痛覚)では、伝わる神経線維が違います。 そして、鍼灸治療では、こりのある場所に鍼が刺さったとき「ズーン」という独特の鈍い痛みを感じることがありますが、これはCという線維によって伝達されています。この独特の痛みは「ひびき」と呼ばれ、C線維を興奮させて大脳皮質に作用し、刺激が脳で認知されるというわけです。 そして、この「ひびき」ですが、きちんと鍼が筋肉のこりに作用している証とされています。 ---------- ----------
山本 高穂(NHK チーフ・ディレクター)/大野 智(島根大学医学部附属病院 臨床研究センター長・教授)