「今日、産婦人科に行ってきました」深夜のLINEを覗き見た妻が知った、定年間近の夫の深すぎる罪障
その後も文章は続き、相手の女性は夫に対し、離婚をして一緒になるか。もし、堕胎するのであれば高額な慰謝料を支払えと要求していることが分かった。 祐子さんは、その場でただ立ちすくむことしかできなかった。 ショックからか激しい目眩を感じ、その日は夫とは別の部屋で、ただ泣きながら眠るしかなかったそうだ。
絶望的な朝を迎えたものの、幸いにも翌朝は土曜日だった。祐子さんは昼前に目を覚まし、のろのろと階段を降りて行った。 そんな気持ちもつゆ知らず、リビングには、呑気にテレビのワイドショーをみている夫の間抜けな後ろ姿があった。 祐子さんは夫に対して、殴り殺したいような衝動を感じながらも、少し時間を置いたからかその背中に向かって冷静に問いかけることができた。 妻の口から「SHIGEMI」という名前を聞かされた途端、夫は動揺の色を隠せなかった。 狼狽える夫に対して、祐子さんはただ淡々と、自分が見てしまったLINEの内容について、その事実を告げるのだった。
ひととおり妻の話が終わると、夫は突然、感情を爆発させるかのように泣きだし、嗚咽しながら頭をつくようにして土下座をはじめた。 そして祐子さんに対し、自分が犯してしまった取り返しのつかない、大きな過ちを詫びるのだった。SHIGEMIという相手の女性は、あろうことか会社の部下だという。 祐子さんは、そんな夫の姿をみて滑稽だと思った。そして、言葉に言い表せないような軽蔑と憎しみと「一生、コイツを苦しめてやりたい……」というサディスティックな思いで、徐々に心が支配されていくのを感じた。 祐子さんは夫に対して、ただ冷酷に言い放った。 「定年が近いので、あなたとは離婚しません」 「相手が暴露をしようが子どもを堕ろそうが、私には一切関係が無いことですから」 夫は床に平伏したまま、妻からの死刑宣告にただ、耳を傾けている。 「このまま一生、家族に対して償ってもらいます。」