「暑くて寝苦しい」「何日も過ごすのは…」。エアコンなしの体育館で避難所を疑似体験 コイン式シャワーや段ボールベッド、関連死防ぐための工夫と課題
日中に36度を超えた体育館は、夜になっても温度が下がらない。だが、ここにエアコンはない。段ボールベッドは安定感はあるものの硬く、寝返りをするたびに目が覚めた。寝苦しさを訴える人もいる。この環境で何日も避難生活を送ることはできるだろうか―。 7月下旬、大阪府八尾市の小学校体育館で、大規模災害の発生を想定した避難訓練が行われ、記者も参加した。電気や水道は使えるが、暑さ対策は扇風機やスポットクーラーがあるだけ。全国の公立小中学校にある体育館の冷房設置率は約1割というから、決してあり得ない環境ではない。 【写真】遺体はどんどん増えていく 能登の火葬場がほぼ使えない…でも「最後の尊厳だけは」 親子に化粧を施すと「かわいくしてもらったね。よかったね」
地震や台風、豪雨といった災害は、暑さを避けてはくれない。そして避難した後、環境変化のストレスなどによって起きる災害関連死を防ぐことは重要だ。組み立て式のシャワーや計算された高さの段ボールベッドといったさまざまな工夫を体験しつつ、課題を探った。(共同通信=河添結日) ▽お腹は膨れるけど・・・ 訓練は避難所・避難生活学会が主催し、7月27~28日に1泊2日で実施した。参加者は、被災者を支援する自治体職員や医療従事者、研究者ら約70人。室内の気温は夕方でも36度を超え、もわっとした熱気がこもっていた。 夕食に提供されたのは、水やお湯を注ぐだけでいいアルファ化米が5種類。食べるときは、実際の被災地の避難所でよく見られるように、床に座って食卓がない環境で食べた。 味付けはひじきご飯などで食べやすかったが、食感はパサパサしていて、食べ進めるうちに物足りなくなった。「お腹は膨れるが、気持ちは満たされづらい」。記者が感じたことは、大阪府災害対策課の大井祥之(おおい・よしゆき)さん(35)も同じだったようで、思わず「これが毎食だったらつらいな」とこぼしていた。
夜は組み立て式のシャワーを使って汗を流した。コイン1枚でお湯を5分間使える仕組みだ。お湯はいったん止めることもできるので、意外と十分な量だった。 シャワーの隣には脱衣スペースがあり、プライバシーも確保されていて安心感があったが、日中は熱気がこもると暑いだろうと感じた。 コイン式温水シャワーを製造販売する「タニモト」(豊中市)の谷本年春(たにもと・としはる)会長(86)は「ビスを使わずに簡単に組み立てられ、コイン式にすることで水量の管理ができる」と語った。 ▽高さ35センチに込められた工夫 就寝前には、参加者で段ボールベッドを約20台組み立てた。1つの箱の中に4つの小さな箱を敷き詰め、さらに、それを6個並べて1台のベッドにする。高さは35センチで、箱は避難生活に使う身の回りの物を収納できるようになっていた。 この35センチというのは、起きるときにベッドから立ち上がりやすい高さを計算したという。避難所・避難生活学会の常任理事で、段ボールメーカー「Jパックス」(八尾市)の水谷嘉浩(みずたに・よしひろ)社長(53)は「直接床に寝ないことで、立ち上がりやすく、ほこりの吸引も防げる。掃除もしやすい」とメリットを強調した。