「暑くて寝苦しい」「何日も過ごすのは…」。エアコンなしの体育館で避難所を疑似体験 コイン式シャワーや段ボールベッド、関連死防ぐための工夫と課題
避難生活では「災害関連死」を防ぐことも大きな課題だ。災害関連死は、建物の倒壊や津波などが原因で亡くなる「直接死」とは別に、避難生活や環境変化のストレスから体調が悪化して亡くなり、災害が原因と認められるものを指す。2016年の熊本地震では、熊本県内における災害関連死が200人以上で、直接死の4倍超となった。 避難所で過ごす上で、いかにストレスを少なくするか。シャワーやベッドには、作り手の工夫が込められていた。 ▽出入り口付近は涼しい、でも扉を開け放していて大丈夫? 就寝時間の午後11時でも気温は30度を下回らず、湿度も70%以上。参加者は各自、段ボールベッドや床に敷いたマットを利用して眠りについた。記者は段ボールベッドで寝たが、想像していたよりしっかりとした安定感。ただ、固くて沈まないので、寝返りを打つ度に目が覚めた。 寝る場所によって暑さの感じ方が異なり、寝苦しさを訴える人もいた。体育館の屋内外で、気温と湿度などから算出する指標「暑さ指数」や気温などを測定した計測健康啓発協会の望月計(もちづき・けい)代表理事(55)によると、夜間の暑さ指数が、屋内の場所によって差があった。「出入り口付近の風通しのよいところは涼しいという声があった。夕方には西日の影響で暑かった場所もあったので、遮蔽するなど対策が必要だ」
文部科学省によると、全国の公立小中学校にある体育館の冷房設置率は2022年9月時点で11・9%。災害発生後に緊急で整備するとしても、作業には数日~数週間はかかるとみられる。研究で参加していた信州大4年の倉橋大海(くらはし・ひろみ)さん(22)は「実際の避難で何日もの間、日中も寝るときも体育館で過ごすと考えたら暑くて大変」と疲れた表情を浮かべた。 見えてきた課題はほかにもある。就寝中は体育館の扉は開放された状態だった。少しでも涼しい空気を入れるのが目的だが、武庫川女子大学の竹本由美子(たけもと・ゆみこ)准教授(47)(繊維材料学)は「今は訓練だから安心しているけど、これが本当の避難所だったら不安」と防犯面の課題を指摘した。 中京大の松本孝朗(まつもと・たかあき)教授(65)(環境生理学)は「災害時には、炎天下でも日中に自宅を片付けに行く人や避難所で過ごす高齢者もいる。両者への対応が必要だ」と話した。 ▽工夫でレベルアップ