「謝ってください」と言われて謝ったら一発アウト…痴漢冤罪で"連行"された時に人生が詰む絶対NG行動
■スマホで動画を撮りながら、「大丈夫ですか?」 電車で隣に座った居眠り女性が肩に寄りかかってくる。重いしウザいし、こちらが席を立つのもシャクに障る。でも、下手に注意して怒らせて「痴漢です!」と騒がれるのが怖い……こんな理不尽な話はありません。でも、なんとかしたいですよね。正解はありませんが、今回は有効な解決策をひとつを紹介します。スマホのインカメラ(自分自身を撮るほう)をセットして、「大丈夫ですか?」「具合悪いんですか?」「降りたほうがいいんじゃないですか?」と話しかけ、目を覚ますところまでを動画で撮影しておく。「大丈夫ですか?」と話しかけられると、ほとんどの場合、目を覚まします。これがオススメの方法です。 少なくとも痴漢行為をやっていないという証拠はこれでOKですから、その限りにおいては問題にならないと思います。ただし、その動画をSNSなどで拡散させたら、肖像権の侵害など別の問題が生じますから注意してください。 「起きなさい」などと揺さぶったりしたら、腹を立てて痴漢呼ばわりされる危険度が増します。ちなみに、女性が腹を立てるか否かは、叩き起こされたことそのものよりも、起こした相手に不快感――キモい、とか――を覚えるか否かに左右されると思います。 もちろん、すぐに席を立つことができればベストですが、電車内の混雑の状況によっては移動することも、席を立つこと自体も難しい場合がありますから、この手法を覚えておいて損はないでしょう。 故意にこちらをハメて、痴漢呼ばわりしてカネをせしめようと、女性のほうが寝たふりをしてもたれかかってくるケースもあるかもしれません。しかし、それがウソ寝だったことを立証するのは非常に難しいですね。 冤罪が立証されて無罪になるケースも近年には出てきています。しかし、まだまだ現場の空気感はそこまでの変化はありません。
■「名刺を渡して去る」は現実的には難しい 電車で痴漢と間違えられた際の対処は、「弁護士を呼んでください」に尽きます。そして「やっていません」「弁護士が来るまで話はしません」と駅員に伝えます。この段階では別に逮捕されたわけではないので、「駅の事務室まで来てください」と言われて応じるか否か、そこに誰が立ち会うかを決めるのは、こちら側の自由です。 なので「名刺を渡して、その場を立ち去れ」「事務室に来るように言われても、入ったら終わりだからホームから動くな」というアドバイスをする人もいます。一理ありますが、それは現実的には難しいでしょう。駅員や鉄道警察はトラブル発生の際、当事者をその場に留め置くことができますし、車両もホームも混雑している時間帯は特に駅事務室への誘導ができます。できれば事務室には入らず、その入り口で弁護士の到着を待つのがいいでしょう。 弁護士を呼ぶのは、その場での不用意な発言や無理な取り調べを防ぐためです。例えば、女性から「謝ってください」と言われてつい謝ってしまったらアウトですし、動揺のあまり矛盾する話をいくつもしてしまうと、後で裁判官に「供述に変遷があって信用できない」と判断される恐れがあります。 直接の知り合いに弁護士がいなくても、士業にはネットワークがあるので、家や車の購入時に関わった司法書士や行政書士、税理士に連絡ができれば、弁護士に繋げてもらえます。普段から連絡先を控えておくといいでしょう。例えば法テラスに電話しても、事務員が出て相談の予約を求められるだけで即座の対応はしてくれません。弁護士でなくても、警察官など捜査の手続きに詳しい人を呼べればベターです。 痴漢は電車内の防犯カメラの映像や、手に付着した衣服の繊維などの証拠が有力なものの一つ。防犯カメラの有無は鉄道会社や車両によって違いますが、「防犯カメラ作動中」という張り紙や半球体のカメラは自分でも視認できます。 ただ、動画の保存期間が1週間、長くて1カ月程度。大事な「やっていない」という証拠が消える前に、駅員に「動画を保存してください」と言っておくことが大切です。また、万が一相手の女性の衣服の繊維が手についてしまったらアウトですから、その場で女性には絶対に近づかないことです。 ※本稿は、雑誌『プレジデント』(2024年11月29日号)の一部を再編集したものです。 ---------- 萩生田 彩(はぎうだ・あや) NEXTi 法律会計事務所 代表弁護士 東京都生まれ。2011年明治大学法科大学院法務研究科法務専攻修了、12年弁護士登録。専門分野に中小企業法務、相続、不動産問題、刑事弁護など。著書に『遺産分割実務マニュアル』など。 ----------
NEXTi 法律会計事務所 代表弁護士 萩生田 彩 構成=西川修一