安野モヨコが夫・庵野秀明のドキュメントを見たら「カメラの前でほとんど心を開かないままに終わったのでひっくり返った」。監督の<断固として>との姿勢を生き方の指針に
漫画『ハッピー・マニア』で人気を博し、その後の作品『シュガシュガルーン』では第29回講談社漫画賞を受賞するなど、数々の名作を生み出している、漫画家・安野モヨコさん。そして、安野さんのパートナーはアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』の監督・庵野秀明さん。このクリエイティブなご夫婦は一体どんな生活を送っているのでしょうか。安野さんは、「監督は眠っている時の姿が浜辺に打ち上げられた棒みたい」と言っていて――。 【書影】お待たせしました!『監督不行届』のその後『還暦不行届』 * * * * * * * ◆集中力 監督は眠っている時の姿が変わっていて 浜辺に打ち上げられた棒みたいに一本になって寝ている。 体の中にある本体が抜け出して、その際入れ物である肉体を ぽいと投げ出して出かけてった、というような感じがする。 なんでそんなふうに感じるかというと 普段から監督の動きがそんな様子だからだ。 テーブルの上にある醤油さしなどを取るときも アームを動かして、醤油さしを掴み、持ち上げる、というように 小さい人が大きいロボットの頭の中に入って 「操縦」してるみたいに見えることがある。
◆背景と一体化してしまう忍者 NHKの「プロフェッショナル」を観た。 監督は自分が出ているものを観ないので1人の時にした。 今日から取材が入るんだ、という話を聞いてから もうずいぶん経つので取材が入っていることを私はほとんど忘れていた。 監督からもその後の報告や今日NHKの人がね、みたいな話がなかったせいもある。 打ち入り(映画制作に入るときの集会)などでカメラを見かけると 思い出すのだが、またすぐに忘れてしまう。 密着取材をするスタッフというのはとても上手に自分たちの気配を消す。 それも現場で訓練されていって身についたものなのだろうけど 黒子(くろこ)というより背景と一体化してしまう忍者である。 「見ている人」がいることで人間は意識し、言動が変わったりするので それをいかに取り払うかがドキュメンタリー制作のコツのひとつでもある。 それでいて時にはタイミングよく質問を入れてコメントを引き出す。 テレビカメラが入ってるのにこんなケンカとかよくできるなー と、大家族ものなど見ていると思っていたけど あれは「そこにいるけどいない人」が撮影しているのだと自分が 密着取材された時に知った。 カメラがあると最初こそ意識して余計なことを言わないように気をつけているが そのうち慣れる。 カメラマンさんもディレクターさんもこちらが何かを言ったりやったりする時 笑ったり「へえ、そういうこと言うんだ」みたいな反応を一切見せないので その存在を感知できなくなっていくのだ。 私などはカメラの存在をすぐに忘れていつものように雑な行動をして 言わなくていいことを言ってるのも全て撮影されていた。
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