安野モヨコが夫・庵野秀明のドキュメントを見たら「カメラの前でほとんど心を開かないままに終わったのでひっくり返った」。監督の<断固として>との姿勢を生き方の指針に
◆鉄壁の守り 一方で心情を吐露するような部分もドキュメントなんだから こういうシーン必要でしょ、って思ってやっているところがあった。 そのために自分にとって不利益であろうと差し出してしまう。 自覚しているのだがなかなか直せない私の弱点の一つだ。 なので監督が警戒姿勢で現れ、好きなように振る舞いつつも NHKのカメラの前でほとんど心を開かないままに終わったのを見てひっくり返ってしまった。 なんだこれー! なんと言う鉄壁の守り。 4年半も取材に来てくれていたスタッフさんならもう少し打ち解けてもいいんじゃないの。 と、思った程に何も話していなくて驚いた。 正直ちょっと申し訳なくも思ってしまった。 いや、思う必要はないんだけど。 それは私のスタンスであって監督はそうではないのだから。 解禁できない情報があったり、自分1人の仕事じゃない分もし何かを漏らしてしまうと 大変だという状況というのも少しあったかもしれないが どんな時でも監督はブレずに自分のスタンスを守る。 それでその場の空気が悪くなろうと、番組を見た人がどう思おうと 要求されても言いたくないことは言わないし、やりたくないことはやらない。 何故なら仕事を真剣にしている状況を取材に来ているからだ。 やりたくないことはやらなきゃいい、偉そうに言うほどのことでもない。 そんなの当たり前だという方もいるかもしれないけど それは結構難しいことだと解説させてもらいたい。
◆要求されたことに応えてしまう人間 先に書いたようにドキュメントの取材班というのは邪魔をしないよう 取材し続けながらも 番組としての山場や特別なシーンを常に探し求めているのである。 それは制作者として当然だ。 しかしながらこちらもそれに合わせて山場を用意することはできない。 自分の話になってしまうけど、実際に自分が取材を受けた時 私は「ずっと漫画描いてるだけで何も特別なことはないんですよ?」と 打ち合わせでお話しした。 締切の合間を縫ってファッションショー行ったり 夜中まで仕事したあとクラブに行って遊んだり、 はたまた息抜きに、と突然1人でモロッコに旅立ったりは一切ないですよ、と。 そして取材が始まったのだが朝10時ごろ出勤したら夜遅くまで漫画描いて 家帰って寝る、の繰り返しすぎて 「あ、ほんとになんもないわ」となったのか 取材班から 「思っていた以上に漫画しか描いていないので絵がずっと同じになってしまうので もう少し変化が欲しい」と注文が入った。 今だったら「いや、、そんなこと言われても最初にそう言ったし 締切なんだからしょうがないんすけど…」と言うかもしれない。 だがなんかまだ若くて頑張り屋さんだったので、提案されるがままに 半日しかない休みの日に地元に帰って昔住んでいたあたりを歩き回る、 というやりたくもないことをやる羽目になった。 虐待を受けていたので子供時代に住んでいた場所は戻りたくないし 地元の友達とは疎遠で大人になってから1~2回集まったけどそれきりだ。 結局団地をうろうろして、やっと見つけた元同級生のやっているお菓子屋さんに行く というだけで終わった。 ものすごい徒労感と子供時代のフラッシュバックでダメージを受けたが そもそも断固として断れば良かっただけの話だったのだ。 だが、私のようにとりあえずその場をやり過ごそうとして あまり深く考えないで要求されたことに応えてしまう人間というのもこの世にはいる。 そんな人間からすると監督の「断固として」という姿勢はいつも 「そっか、嫌だったら断ってもいいんだ」 という指針になるのだ。
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