「着る服がない」のではなく「我慢して着ている」 障害者の悩みから生まれた「服のお直し」サービス 誰もが好きなスタイルを選べる社会へ
ファッションの可能性を広げる他企業との協業
――2024年8月にはZOZOとの協業を始めましたね。 ZOZOTOWNで最初から着やすい状態の服を販売する「キヤスク with ZOZO」というサービスです。具体的には、ZOZOTOWNの「Made by ZOZO」という受注生産のサービスの中で、キヤスクでおこなっているような着やすい仕様のパターンを最初から組み込んだ服を販売します。 これまで、メーカーが障害者向けの服作りに取り組もうとしても、大きな壁がありました。1つは開発の手間です。障害のある方々の細かなニーズを理解し、それに合わせた服を開発するのは非常に時間と労力がかかります。 もう1つは在庫リスクです。需要が限られているため、作っても売れ残るリスクが高かったのです。 しかし、ZOZOの受注生産の仕組みを使えば、この2つの問題を解決できます。キヤスクが提供する仕様を使えば開発の手間がかからず、受注生産なので在庫リスクもありません。各ブランドはリスクを抱えることなく、今までなかなか届けられなかった方々に自分たちの服を届けることができるようになります。 また、ZOZOTOWNには多くのブランドが参加しているので、様々なデザインやサイズの中から選べるようになります。お客様からずっと要望があった「最初から着やすい服がたくさんあればいいのに」という声に応えることができるのです。 現在はまだ、ZOZOとキヤスクのオリジナル商品を2アイテム出している段階ですが、今後は様々なブランドにも参加してもらう予定です。将来的には、ZOZOTOWNで販売されている普通のパンツの中に、横にファスナーが付いた着やすいバージョンも選択肢として並ぶような状況を目指しています。 この取り組みは、障害のある方々の服の選択肢を大きく広げるだけでなく、社会全体の意識も変えていく可能性があると思っています。「着やすい服」が特別なものではなく、当たり前の選択肢の一つになる。そんな社会を実現する大きな一歩になると期待しています。