障がいを持つ娘のため、3年間は主夫だったCCCの新社長 カリスマ創業者から後継指名され、「無報酬」を求めた覚悟
◆覚悟の示し方は「無報酬」
――後継者になるのに無報酬を自ら申し出た上、カリスマ創業者にも同じ事を求めた理由は何でしょうか? 会社の業績が厳しいこと、経営の立て直しをするのが自分の役割だと分かっていました。 そういう役目を託された人間が固定的に高給を取っている場合ではないというのが、理由のひとつです。 もうひとつ、私なりの「覚悟」の示し方としてお願いしました。 経営というのは「やれと言われたからやります」で務まる仕事ではありません。 まして創業者と対峙して仕事をしていくとなれば、相手が驚くほどの覚悟を見せなければならないと思ったのです。 つまり、こちらも相応の覚悟で引き受けるのだと、増田に示す必要がありました。 増田は、その申し出をしっかり守ってくれました。 そのことを公にしなかったのは、社長が給料ももらえない会社なのかと、社員や関係者に動揺を与えたくなかったからです。 今はもらっていますのでご安心ください(笑)。 ――2020年から現在に至るまで、副社長から社長、COOからCEOへと肩書が変わっていますね。 それにはどのような理由があるのでしょうか? 実際のところ、2022年当時は、CEOまで引き継ぐかどうか決めていませんでした。 私自身も増田からCEOのポストを譲り受けるのがいいのかどうか、分からなかったからです。 ただ、その後の私と増田は、経営者と株主という関係性になっていきましたから、経営サイドとして意思決定をするうえで、株主としての増田に相談をする場面も時としてありました。 増田も経営に関与することはなく、株主として意見をくれることはありました。 2024年、CEOを譲り受けましたが、これは増田にとっても重いことだったに違いないと思っています。 でも、これでひとつの区切りになったと思います。 ――後継者になることを公表後、さまざまな評価や噂を耳にされたのでは? 創業40周年にしてプロパー社員が会社を引き継ぐのですから、それはもういろいろ言われるだろうとは思っていました。 当初は社員も、私と増田のどちらの顔色を伺えばいいか戸惑っていたのではないでしょうか。 しかし、私自身は世間からどのように見られようと、何を言われようとまったく気にしていませんでした。 それよりも、事業再生と社を未来につなげる仕事に集中することが先決だと思ってやってきました。 そもそも、私に能力があるから選ばれたわけではなく、私以上に能力のある人はたくさんいます。 この大役が巡ってきたのは、巡り合わせというしかありません。 ですから評価など気にせず、自分に回ってきた役目を果たすのみ、という心境です。