障がいを持つ娘のため、3年間は主夫だったCCCの新社長 カリスマ創業者から後継指名され、「無報酬」を求めた覚悟
◆「打診され、その場で引き受けた」
――後継者の打診を受けたときの心境は? 正直に言うと、面倒なことになったなと思いました。 会社の内外を問わず、CCCといえば増田であり、増田がCCCの看板のようなものでした。 その創業者の後を引き受けるのは大変なことです。 私は、増田のそばで働いていたこともありますから、その常人離れした仕事ぶりも知っています。 だから、この人と一緒に会社の経営をしていくというのは、並大抵のことではないだろうと思っていました。 ただ、私は頼まれた仕事は断らない主義でやってきたものですから、重い決断ではありましたが、「わかりました」とその場でお返事しました。 そもそも、創業者が誰かに経営を任せるというのは、よほど考えた末の結論に違いありません。 その思いを受け止めた上での決断でした。 ――CCCにとって本格的な代表交代は初めてのことでした。 経営を引き受けるに当たってどんなことを重視しましたか? 増田から言われたのは、「人を育ててほしい」ということです。 「自分は事業を作って育てることはできたが、人を育てられなかった」と。 「だから、人を育てるのはおまえに任せる」と言われました。 私はCCCで人事部門を軸にキャリアを積んできました。 人が最大限、能力を発揮できる環境づくりや教育に取り組んできました。 そのことも増田はよく知っていますから、その願いを託されて「なるほど」と思いました。 そこで私は、増田にいくつかのお願いをしました。 ひとつは「代表取締役」の肩書です。 肩書がなければ、私の意思決定など何の力も持ちません。 結局は増田の言いなりに動くだけになります。 それなら後継者を立てる必要はないわけです。 社員もステークホルダーの方々も、増田の顔色をうかがいながら仕事をするでしょう。 そんな状態では、経営改革などできるわけがありません。 私は社員や加盟店など、ステークホルダーから一定の支持を受けるためにも、肩書にはこだわりました。 もうひとつお願いしたのは、これは社員には言っていないことですが、1年間は固定報酬を無報酬とし、利益を生んだらその5%を報酬としてほしいということです。 そして増田にも同じ条件を求めました。