「男たちよ、乳房だけを愛でるな」 農村女性の生きづらさを詩に込めて
地方でのジェンダー不平等いまも
小原さんにとって、麗ら舎の仲間は「共感者」だそうです。 「友達というよりは、私にとって、ご飯を食べるように必要なもの。この人たちの支えがあるからこそ、やっていける」 麗ら舎では不定期で例会を開き、本を読んだり、時事問題を話し合ってきたりしてきました。毎年出す文集「別冊おなご」は今年、第39号を重ねました。SNSのなかった時代から、女性差別、嫁姑問題や戦争体験など、女性たちが様々な思いを吐き出す場となってきました。 1回目から欠かさず参加する渡辺満子さん(92)は、第1号で戦後すぐに消化不良で亡くなった妹のことを書いています。「当初は文章を書くのがすごく苦手だったが、記録すること、継続の大切さを感じる」と語ります。 30年前から参加する奥州市の宮崎順子さん(87)は、戦時中に旧満州で過ごしました。「小学校のときに日本に引き揚げた。麗子さんに『戦争体験を書きなさい』と言われ、自分の胸にしまうだけではダメだと分かった」と振り返ります。事務局をつとめる佐藤弘子さん(76)は「この会では、男性も含めて誰もが対等に話し合える。男性と『子供を産む・産まない』という深いテーマを語ったこともある。他の場所では考えられない」といいます。 メンバーが集まると、にぎやかで笑い声が絶えません。お菓子を持ち寄り、近況交換をしながら会が進みます。その時のテーマとなる文章を声に出して読み、心と体に浸透させながら平和への思いを新たにしてきました。小原さんは「1年ごとに繰り返していたら40年になっていた」と語ります。 少しずつ状況が変わりつつある大都市に比べると、地方のジェンダー平等はまだまだ進んでいないように思えます。それゆえにいまも地方から都会に流出する女性も少なくありません。年末年始に地元に帰省する女性たちは、多かれ少なかれそれを肌で感じるでしょう。それでも、小原さんのように地域に根ざしながら、自分の言葉でフェミニズムを獲得してきた女性たちは日本各地にいます。そういった女性たちの力強くしなやかな歩みは、今を生きる私たちに大いなる前向きな力を与えてくれるのです。
文:伊藤恵里奈