大人が怒鳴って子供を指導する時代のなか、生ぬるいと言われても子供の自主性を重んじたFCアミーゴの"特別賞"
|夢中になって上手になるサイクル
―本気で勝ちたい、うまくなりたいと思う機会が、一番の成長材料ですね。 金坂 指導で1番大事にしなければいけないのは、子供たちをその気にさせることだと思います。しかし、逆効果となる指導や期待が世の中には多いと感じます。大人が子供のために良かれと思って教えることでも、大人から子供にサッカーを詰め込もうとするのは、ただの欲張りにすぎません。 子供は、楽しいはずのサッカーなのに、やらなければいけないことに疲れてしまいます。疲れてくると集中力がなくなり、ミスが出て、怒られて、また楽しくなくなります。夢中になって上手になるサイクルとは真逆です。英才教育で成功する選手もいるとは思いますが、何万分の一の可能性でしょう。子供は、みんなが同じように教えられたことをすぐに覚えてステップアップするわけではありません。その子に対して最適かどうかを無視して押しつけるのは、良くないと思います。 ―練習環境は、設立当時と変わらないのですか? 金坂 当時は境港市と米子市にスクールがあったのですが、今は境港だけになっていて、米子空港近くの中浜サントピアと市民スポーツ広場を利用しています。当時はどちらも土でしたが、境港市の公共施設は、小学校の校庭を含めて、10年頃に天然芝になりました。 ―最後に、今後どのようなクラブにしていきたいと考えているかを教えてください。 金坂 子供の自主性を大事にするスタイルで、一時期は全国大会に出場できていましたが、最近はその舞台から遠ざかっています。少子化が進む中、子供たちは強いチームに集まっています。数年結果が出ないと、「アミーゴって、昔は強かったらしいよ」と昔話のように言われてしまいます(笑)。 でも、指導スタンスを変えずにやってきて、今でも県大会のベスト16やベスト8に進んでいます。子供たちはすごく成長していて、まったく勝ち目がなかった強いチームと勝負できるようになったりもします。中には、よそのチームでサッカーがつまらなくなってしまった子が、うちに来て「やっぱりサッカーは楽しい」と言って続けている姿もあります。 もちろん、試合には勝ちたいです。でも、どこまで勝てたかよりも、誰にでも可能性があると信じて、子供を成長させることのほうを大事にし続けたいと思います。 PROFILE 金坂博(かねさか・ひろし) 1969年4月17日生まれ、鳥取県出身。米子工業高校時代に、全国高校総体と全国高校サッカー選手権大会に出場した。2004年に長男が加入したことをきっかけに、FCアミーゴで指導を開始。U-12チームとU-15チームを指導し、現在はU-15チームの監督を務める。22年から、NPO法人ウルトラスポーツクラブの副代表理事を兼ねている
サッカークリニック編集部