日本サッカーのボーダレス化が生み出す課題
しかし、厚生労働省が2008年に発表した調査結果では、2006年に日本国内で生まれた子ども約110万人のうち両親の少なくとも一方が外国籍だったケースは約3.2%、おおよそ30人に1人の割合に達していた。時代の変化とともに進む日本のグローバル化と、生まれながらに日本国籍と外国籍とを有する若年世代の台頭はおそらく密接にリンクしている。元日本代表で現在は解説者を務める水沼貴史氏は、鈴木やオナイウたちが年代別日本代表に名前を連ねている現状を「非常に喜ばしいことだと思う」と歓迎する。 「ともにサッカーを愛する者同士でありながら、たまたま生まれ育った環境が二重国籍だったということ。帰化とは話が異なるものだと思っているし、そうした子どもたちが日本の社会にごく普通に受け入れられ、ごく自然にサッカーを始めて、地元のクラブチームや高校を舞台にして育っていく、という環境が整ってきていることの表れだと個人的には考えている。例えば野球ではメジャーリーグで活躍しているダルビッシュ有がいるし、最近の高校野球でも二重国籍を持つ選手が少なくない。スポーツに対する選択肢がそれこそ無限にある中で、サッカーを選ぶ二重国籍の子どもたちが増えていることは、サッカーそのものの普及や土壌の広がりと決して無関係ではないと思っている」。 代表入りを果たしている若手選手以外でも、例えば東京ヴェルディにはアイルランド人の父親と日本人の母親を持つ22歳の双子、GKキローラン菜入とDFキローラン木鈴がいるし、同じくヴェルディのGKで仁川アジア大会にも出場した20歳のホープ・ウィリアムはアメリカ人の父親と日本人の母親の間に生まれた。昨年の全国高校選手権で初めてベスト8に進出した修徳高校(東京都)をけん引したFW加藤禅(現関東リーグ1部・東京23FC)も、オランダ人の父親と日本人の母親を持つ二重国籍選手だった。 優勢遺伝の関係で、二重国籍の選手が有する体のサイズやスピードなどの身体能力が、両親が日本人の選手を上回るケースは大半を占めるだろう。185cm、74kgのサイズを誇る鈴木は仁川アジア大会でチーム最多となる5ゴールをあげたが、だからといってエースとして絶賛され、アギーレジャパン入りうんぬんを語るのは時期尚早と言っていい。