次期首相に待ち受ける課題、日米同盟と日中関係への対応が最優先に
(ブルームバーグ): 日本の次期首相にはさまざまな課題が待ち受けているが、唯一の同盟国である米国との良好な関係の維持と、最大の貿易相手国である中国との関係悪化への対応ほど重要なことはないだろう。
事実上の次の首相が選ばれる自民党総裁選は27日に投開票が行われる。今回の選挙戦で外交問題は後回しにされてきた。
だが、中国で先週起きた日本人男児殺害事件を機に状況は一変した。総裁選の立候補者全員が徹底した調査を求め、中国在留邦人の安全確保を訴えるようになった。
先月には中国の軍用機が初めて日本の領空を侵犯したこともあり、今週開かれた日中外交当局の会合では既に緊張が高まっていた。共同通信は26日、海上自衛隊の護衛艦が初めて台湾海峡を通過したと報じたが、この動きは中国の反発を招く恐れがある。
10月1日に召集される臨時国会では、自民党の新総裁が首相に指名される見通しだ。総裁選の立候補者9人はいずれも、威圧的な行動を強める中国や、北朝鮮とロシアの脅威に対抗するため、引き続き米国と連携していく意向を示している。
ハワイを拠点とするシンクタンク、パシフィック・フォーラムでシニアアドバイザーを務めるブラッド・グロッサーマン氏は、「大きな変化を想定していない。日本政府の主な目的は、米国の信頼性に対する疑念や一段と緊迫化する外部環境を前に、強固な日米同盟を維持することであり、他の安全保障パートナー国との関係を拡充・強化することだ」と語った。
米国の最近の動きは内向きと見られており、信頼が揺らいでいる。日本製鉄による米USスチール買収計画を巡り、民主党のバイデン米大統領と共和党幹部らは反対姿勢を示した。
もっとも、総裁選の立候補者はいずれも日米関係の大幅な変化を訴えておらず、大半は韓国やオーストラリアを含む主要な民主主義国との関係を深化する意向を示している。
だからといって順風満帆というわけではないだろう。11月の米大統領選で民主党候補のハリス副大統領が勝利した場合、日本に対してどのようなアプローチを取るかはいまだ未知数だ。共和党候補のトランプ前大統領は選挙戦で、日本との貿易不均衡をあらためて批判している。トランプ氏は大統領在任中、日本政府に在日米軍の駐留経費の負担増を求めていた。