「目標を紙に書いて壁に貼る」は科学的に正しい…目標を書いた人と書かなかった人では達成率が違う理由
目標を達成する科学的なコツはあるのか。明治大学の堀田秀吾教授は「目標を紙に書いて壁に貼るアナログなやり方は、科学的に理に適っている。思い浮かべているだけの人より、書いた人のほうが達成率が上昇したという実験結果が出ている」という――。 【この記事の画像を見る】 ※本稿は、堀田秀吾『世界の研究101から導いた 科学的に運気を上げる方法』(飛鳥新社)の一部を再編集したものです。 ■「私は痩せられる」と信じた女性ほど本当に痩せた ハンブルク大学の心理学者ガブリエル・エッティンゲンは、著書『成功するにはポジティブ思考を捨てなさい 願望を実行計画に変えるWOOPの法則』(講談社)の中で、むやみやたらなポジティブ思考に警鐘を鳴らしています。 ただし、エッティンゲンの目的は行動の重要性を伝えることであって、ポジティブ思考の全否定ではありません。 むしろ、ポジティブ思考の重要性が分かる実験を、エッティンゲン自ら行っています。 ダイエットのプログラムに取り組む肥満女性に、目標達成に対する自信を尋ねたところ、「自信がある」と答えた被験者たちは、そうでない被験者と比べて約12キロ多く減量に成功する結果が出ています。 ポジティブ思考の強さ、さらには女性の信じる強さを裏づける研究と言えます。
■「ポジティブ思考=楽観的に考える」ではない では、エッティンゲンはなぜ、ポジティブ思考に警鐘を鳴らすのか? その答えも、同実験にあります。 被験者に自信を尋ねるとき、エッティンゲンは「食べ物の誘惑に勝てると思うか?」とも質問しているのです。 そして、「誘惑に勝つのは簡単」と考える被験者と、「そうではない」と考える被験者とでは、後者のほうが約11キロも多く痩せるという驚きの結果が出ています。 裏を返せば、目標達成を甘く見るポジティブ思考の人は、ほとんど痩せられなかったわけです。 この研究は、自分の価値を低く見積もるネガティブ思考はNGですが、「未来の想像」についてなら、ネガティブ思考がむしろプラスになることを教えてくれます。 大切なのは、楽観的なポジティブ思考ではなく、現実的なポジティブ思考で目標に臨むことです。 簡単に成功できそうなら、わざわざ目標にはしないでしょう。 基本的に、目標達成への道筋には多くの壁があるのが当たり前です。 ■目標達成のために必要なものをリアルに想像する アメリカで大活躍する野球選手の大谷翔平が、高校時代に詳細なマンダラチャートで目標達成への道筋を考えていたエピソードは有名です。 自分が目標に到達するために必要だと思うものをリアルに想像すると、そこに立ちはだかる障壁を具体化できるので、アクションに繫げやすくなるわけです。 単純なたとえですが、大谷選手に憧れて、「自分は大谷みたいになれる!」とポジティブに思うけれど、現状では特に身体能力に恵まれているわけではない同い年の小学生A君とB君がいたとします。 A君は特に未来のことを考えず、ただポジティブに「大谷になれる」と思っている。 一方、B君は大谷選手や、幼い頃から身体能力が高かったアスリートが、幼少時代にやっていたトレーニングなどの取り組みを調べて、自分の現在位置との差を比較してポジティブに「大谷になれる」と思っていたとしたら――。 おそらく、夢が叶うかどうかはともかく、10年後、20年後に大谷選手に近づいているのはB君に違いありません。